サンダース現象

2016年02月11日 11:04

アメリカ大統領戦の予備選第二ラウンドに於いて民主党候補バーニー サンダース氏が大本命のクリントン氏に圧倒的差をつけて勝利しました。サンダース氏とクリントン氏のそれぞれの得票率は60.4%と38.0%でその差は歴然としています。第一戦のアイオワでも僅差まで迫っていたことからサンダース人気が全国レベルに広がれば支持層は増えるかもしれないと先日指摘させていただきましたがどうやらそのトレンドが出てきたようです。

まだ先が長い選挙ですが、サンダース人気の分析は「アメリカの今」を知るうえで有益かもしれません。

このサンダース氏、74歳という高齢(仮に大統領になればアメリカ史上最高齢の大統領となる)にもかかわらずその熱い支持層は若年層であります。アイオワのケースをみると17-29歳の支持層はサンダース84%、クリントン14%、30-44歳でも58%対37%となり、45歳以上になるとクリントン氏支持が優勢になります。

この若年層の支持層はいわゆる第二次ベビーブーマー層で80年代、90年代に生まれた層とほぼ重なると考えて良いと思います。つまり、民主党の戦いをみるとクリントン氏が注力する第一次ブーマー層対サンダース氏支持の第二次ブーマー層の対立とも言ってよく、明白な思想のギャップが生じています。

第一次ブーマー層はベトナム、ウーマンリブ、ヒッピー、ロックという言葉に代表され、世界は米ソ冷戦、経済はアメリカが主導権を持つ強い国家がイメージでありました。

ところが第二次ブーマー層の場合、物心ついたころに911という衝撃が走ります。あるいはリーマンショックもあり住宅バブルが崩壊します。更にはイラクやアフガンでの苦労や戦場から戻った若者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)も問題視されました。G20や中国の台頭でアメリカ至上主義が明白に終わった時代でもあります。

それと共に社会が変わりつつあります。例えばなぜコストコが破竹の勢いなのか、改めて考えるとモノが溢れる中、選択(買い物)を楽しみにしていた第一次ブーマー層の消費性向に対してコストコは「良品の一物主義」で選択肢が基本的にありません。つまり、人々は十分に満たされ、競うように良いものを発掘しなくても十分そこに満足できるものがある、というアプローチに見えます。

同様にアマゾンなどネットショップがなぜ流行るのか考えてみると便利さばかりが理由ではなく、画面越しに買っても心配がないという打算でもあります。日本においてネットで洋服を買うのは珍しくありません。弊社の入居するバンクーバーのオフィスビルに同居するネット専門の靴屋は破竹の勢いで成長しています。

もう一つの切り口としてなぜ、スタバの長テーブルに人が集まるのか、であります。会話こそしなくても同じ空間を共有できる仲間がいる感じが心強いということではないでしょうか?いちいち声は出さないけれど何かあればみんなと協調、協業、共闘できる仲間づくりのような気がします。

その背景には上位1%になれない大多数の普通の人が如何に心地よいライフを育むかが大きな関心事になっているように思えるのです。ワークライフバランスといったゆとりは今世紀初頭に流行ったMBAブームとは相反します。

今、世間を騒がしつつあるドイツ銀行は幹部候補には大学院卒が求められるとされます。それが経営不振の原因の一つであるとすればサンダース氏のポリシーはアメリカの向かうべく核心をついています。

サンダース氏の主張する民主社会主義はクリントン氏の支持層が苦い顔をする社会主義とかなり別物であるという認識を持っています。30歳ぐらいまでの若者は3割程度が社会主義に好感が持てる(Yougovより)と答える世論調査があるのも感性の温度差の結果もあるでしょう。

振り返ってみれば日本は世界でもっとも成功した社会主義国とも言われています。言い換えればサンダース氏のポリシーは日本人と組し易いアプローチなのかもしれません。それはやはり、時代の流れの明白な方向性にも思えます。IPOで億万長者になるパッションを持つアメリカがある一方でフェイスブックのザッカーバーグ氏のようにその富の大半を社会に還元することを公言する流れはファミリーツリーを太くするよりも自分を取り巻く人たちと(汗は流さないけれど)心地よく過ごしたいという風に感じます。

私が誰が大統領になるかよりも国民がどういう反応を示すのか、その傾向が見たいと思ったのはこんなアメリカの素顔を考えてみたかったのです。まだまだ当分、観察日記が書けそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 2月11日付より

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