やはり「同一労働・同一賃金」の実現は不可能である

2016年02月18日 06:10
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一昨日、エントリーした「同一労働・同一賃金の実現は120%不可能である」が思いのほか読まれたようなので続編を投稿したいと思う。

●同一労働の定義は困難である

「同一労働・同一賃金」は同じ仕事をしていれば正社員・非正社員などの雇用形態に関わらず給料に差をつけない考え方である。しかし、人事部、とりわけ人事企画部門で人事制度の策定等に着手した経験のある人にとっては、これが如何に難しいことか分かるはずである。

日本企業の多くは職能資格制度を導入している。職能+資格だから、能力+社会年齢+役職で処遇が決まることになる。しかし、特にホワイトカラーにおいては仕事の定量化・定性化が難しい。

同じ営業マンであっても、新規開拓のみで1億円売り上げた社員と、継続案件のみで1億円売り上げた社員とではパフォーマンスが異なる。別ケースで、職務が同じで新規開拓営業で達成した売上が同じだとしても、片方は1社10万円の売上を1000社受注したもの。片方は、1社で1億円受注したケースも同一の評価はできない。

また、経営陣が取引先にしたいと懇願していた企業を受注した営業マンがいたとしよう。売上が目標に達していなくても相応の評価を受けるはずだ。また、上司に気に入られている営業マン、嫌われている営業マンであれば、上司に気に入られている営業マンの評価のほうが総じて高くなるものである。そもそも、同一労働という考え方が馴染まないのである。

また、「同一労働・同一賃金」を導入する企業は、総人件費圧縮を目的に制度を導入するはずである。総人件費がアップするなら現行制度を変える必要性はないからだ。

総人件費が変わらない場合、正社員の給料が下がり、非正規の給料がアップすることになる。不利益変更になるから労組がすんなり納得するとも思えない。つまり、非正規の給料をアップするためには、企業の総人件費が現行よりも増えることを覚悟しなければ実現は難しいのである。しかし、総人件費のアップは企業経営を圧迫することになる。

企業はどのように認識しているのだろうか。多くは同一労働を定義することが不可能に近いと思っているはずだ。職務についてその中身や定義、評価方法について精査しなくては議論すらできないからだ。

●狙いはなにか?

政権の真意はどこにあるのだろうか。従来、政権は「同一労働・同一賃金」について必ずしも前向きとはいえなかった。賃金格差是正や賃上げは、本来は労組の役割であり野党の政策だからである。

そして、これを容認するということは野党の政策を飲み込むことにほかならない。拮抗ではなく飲み込んでしまえば、今度は野党が「同一労働・同一賃金」を争点にできなくなる。

私は正社員と非正規の待遇格差がつきすぎた感があるので、是正すべきとは思う。また、非正規の結婚率等を鑑みれば、非正規の処遇が変われば消費拡大など好影響が見込まれる可能性もある。しかし、前回から申し上げているとおり、同一労働の定義は非常に難しいのである。

また、政治家が労働問題や企業の内実に精通しているとも思えにくい。経験豊富な人事コンサルタントなどを呼んでグループインタビューなどをして方策を描いたほうが現実的かも知れない。

さて、「同一労働・同一賃金」について、首相はやると明言し均等待遇まで検討するとしている。有権者からみて実現の可能性があるのは与野党どちらに見えるのだろうか。もはや言うまでもないだろう。

尾藤克之
経営コンサルタント

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尾藤 克之
コラムニスト/経営コンサルタント

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