北朝鮮で処刑された人はその後どこに?

2016年02月22日 12:00

北朝鮮最高指導者、金正恩第1書記は政権掌握後、多くの党・軍幹部たちを処刑してきた。最も大きな衝撃を与えた処刑は叔父の張成沢(元国防委員会副委員長)の殺害だ。金日成主席、金正日総書記、そして金正恩第1書記と3代に渡る金王朝独裁政権下で親族関係者が公の場で処刑された初のケースだった。粛清や処刑に慣れている北朝鮮指導部も金正恩氏の叔父殺害には心底から震え上がったのではないだろうか。あり得ないと考えてきたことが、いとも簡単に破られてしまったのだ。

最近では、李永吉人民軍総参謀長が処刑されたという噂が流れてきた。李明秀前人民保安部長が人民軍総参謀長に就任したことが判明したばかりだから、前任者の処刑はほぼ間違いない、と受け取られている。次は誰が処刑されるか、北の党・軍幹部たちは夜も心落ち着けて休むことができないのではないか。

30歳代の金正恩氏は就任後、100人前後の党・軍幹部を処刑したといわれる。まさに、処刑魔という称号が最も適した独裁者だろう。ここまでは前口上だ。以下、このコラムのテーマである「処刑された人はどこに消えたか」だ。

当方が何を言っているのか理解できない読者もいるかもしれない。具体的に考えてみたい。甥の金正恩氏によって処刑された張氏はその後、どこに消えたか、というテーマだ。

張氏は処刑され、その肉体は文字通り、銃弾で粉々にされた。しかし、それで張氏の肉体は元の姿を失い、肉体を形成してきた無数の物質は地に戻った。問題は、張氏を張氏としていたその精神、宗教的には霊体はどこに消えたのか。

このように表現すると、直ぐにオカルトの世界を思い出す読者もいるだろう。当方は現存する霊体の行方をテーマとしている。唯物主義教育を受けてきた世代はそんな話は根拠のないおとぎ話と一蹴するかもしれないが、そのように冷笑する人も自身の肉体が消滅した後、これまで思考してきた自分という精神の世界が同時に完全に消えてしまうとは信じていないのではないか。

霊体の存在を信じるためには宗教などいらない。少しばかり冷静な理性と経験があれば、断言こそ出来ないが薄々分かっていることだからだ。そうでなくては、どうして人は墓参りをし、墓前で祈ることができるだろうか。

デンマークの王子ハムレットが父親殺しの犯人が誰かを、殺された父親から聞いたように、処刑され、殺害された霊体の復讐劇は昔も今も変わらない。

張氏は処刑後、霊体として存在している。とすれば、処刑した側、金正恩氏にとって文字通り悪夢だ。処刑された側の精神、霊体を先ず考えてみよう。彼は自分を殺した甥を憎むだろう。甥が地上ですることを妨害するかもしれない。同じように、処刑された霊体と連携して金正恩処刑を計画するかもしれない。恨みを持つ霊体はその恨みが晴れるまでは、霊体の世界、霊界には行けないからだ。

一方、金正恩氏の場合、叔父を殺したという思いを完全に脳裏から追放できない。忘れたいが、忘れることができない。そこで酒の瓶に手が行く。何をしても心が完全には晴れない。だから、暴飲暴食に走る。その結果、体重130キロの金正恩氏が生まれてきたわけだ(「金正恩氏が首脳外交できない理由」2015年9月28日参考)。

核実験、長距離弾道ミサイルの発射も金正恩氏の心を満足させない。だから、危険と分かっていても冒険に乗り出す。勝利の見通しがあるから戦いを始めるのではない。戦争をしないと心が落ち着かなくなるからだ。朝鮮半島はまさに危険水位にあるのだ。

金正恩氏の場合、張氏だけではない。他の党・幹部も霊体となった後、金正恩氏から離れることができない。憎いからだ。だから、金正恩氏の周辺には多くの憎しみを持った霊体が取り囲んでいる。金正恩氏はそれらの霊体を抑える力はない。霊体は時空を超えて金正恩氏にとりつくからだ。

独裁者の最後が幸せではない理由をこれで理解できるだろう。地上で全ての財宝をものにし、願いを実現したとしても、自身が処刑してきた人間の霊体の恨みから解放されることがないからだ。独裁者になれ、といわれても独裁者になるべきではない。独裁者ほど、この地上で可哀想な人間はいないからだ。

蛇足だが、モーゼの十戒にも明記されているように、人を殺すべきではない。この「殺す」という意味は、肉体の殺害だけを意味しない。言葉による心情の蹂躙も立派な殺害に当たる。言葉で人を殺すのは肉体を処刑するのと同様、取り返しのつかない犯罪だ。

政界だけではなく、社会の全ての分野で暴言・中傷・誹謗の言葉が飛び交っている。他者の心情を傷つける言葉は人を殺すナイフと同じだということを肝に銘じるべきだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年2月22日の記事を転載させていただきました(編集部でタイトル改稿)。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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