同一労働同一賃金で自分の給料ってどう変わるの?

城 繁幸

本日配信予定の今週のメルマガの前半部の紹介です。
同一労働同一賃金という言葉は、ILOによって労働者の基本的人権と定義されるくらい世界では一般的な雇用ルールですが、従来の日本では必ずしも認知度は高くありませんでした。筆者自身、数年前にテレ朝に雇用問題特集で出演した時に、自民党の石原伸晃センセイ(現・経済再生相!)から「それって共産主義のことですか?」と言われてびっくりしたことを記憶しています。

ていうかあの発言は本当に衝撃で、あの時だけは「あんた何言ってんの?ていうかなんでここに出てきてるの?」という感じで民主から社民、共産の先生がたと初めてシンクロできた気がしましたね。

まあそれくらい知名度の薄かった同一労働同一賃金ですが、なぜか最近、国会論戦やメディアで取り上げられる機会が急増し、急速に認知度が高まりつつあります。

それが労働市場流動化とセットであるという概要についてはこちらで述べましたが、なぜいま同一労働同一賃金なのか、そして個人のキャリアにどう影響してくるのかについて、今回は詳しくまとめたいと思います。

賃金が凄く上がる人

正社員の中には、総合職と呼ばれる人たちがいます。呼び名は企業によってまちまちですが、大卒で大企業に入った男性はたいていこの枠ですね。彼らは組織内で比較的高い賃金を貰う一方、辞令一枚での全国・世界転勤をし、ジョブローテーションという形でいきなり畑違いの部署に送られたりすることも珍しくありません。

こういう人たちの賃金は大幅に上がることになります。とうのも、彼らは会社のために私生活を犠牲にして転勤したり、会社が命じたキャリアに従わねばならないという責任を担っているからです。今まで終身雇用の中でなあなあで済まされてきたそうした責任料が、同一労働同一賃金によってきっちり支給されることになるわけです。

ではどれくらい上がるか。それは市場が決める話なので予想は出来ませんが、目安としては、同業の外資系で同じくらいのポストについている人間より、1~2割は多くなるはずです。

若手についても、給料は大幅に引き上げられることになるでしょう。従来はどんなに超大手であってもせいぜい350万円程度の初任給から時間をかけて昇給していくものでしたが、「65歳までの雇用は保証出来ない代わりに今働いた分はきっちり払うよ」ということになれば、やはり1~2割は上がるはず。おそらく最終的には初任給も人によって額が変わることになるでしょう。

もちろん、契約社員や派遣社員といった非正規雇用労働者も、担当する仕事内容に応じて評価されるようになり、時給換算で正社員を逆転することも珍しくなくなるはずです。実は、従来、正社員と非正規雇用の賃金格差を決定的にしていたのは「付加価値の高いコアな仕事は終身雇用せねばならない正社員に、そうでない仕事は(規制により)数年ごとに人を替えないといけない非正規雇用に」という企業の労務戦略にあったわけです。まあそれ自体は有期雇用は5年まで、派遣社員は3年までという縛りがあったからそうせざるをえなかったのですが、そういう縛りがやはりなくなるので、やる気と能力さえあれば、非正規雇用の人たちも十分コアな業務に進出できるわけです。

世の中には「有期雇用を禁止して使い捨てを辞めさせる」なんてことを真顔で言うアホな政治家が多いですが、本当の意味での使い捨ての禁止は、労働市場の流動化と同一労働同一賃金の実現で変わっていくものなんですね。

それから、もう一つ重要な変化もあります。正社員の解雇が可能になれば、企業はわざわざ派遣会社を使うメリットはないので、派遣労働者は数カ月たつと直接雇用に切り替えられることになります。となると派遣会社に払っていた分の手数料に近い額が上乗せされるはずで、だいたい3割ほどは彼ら派遣労働者の給料も増えるでしょう。

以降、
「普通の正社員」はこう変わる
逆に、賃金が下がる残念な人
でも、今回はまったく別のオチが待っていると筆者が考える理由

※詳細はメルマガにて(夜間飛行)


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2016年2月25日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。