大統領選に見る国民心理

ドナルド トランプとかけて半沢直樹と解く、その心は気持ちが晴れてすっきりする。

国民のハートを掴む為には心臓の奥底にある深層心理を読み取り、手を心臓の奥底まで突っ込み、ぐいと引っ張り出して優しく癒すことで即効性がでると思います。安倍首相は民主党政権でモヤモヤしていた国民の心をすきっと爽快にさせるアベノミクスで円安株高を演出し、日本が息を吹き返したようになりました。

お隣、中国では習近平国家主席が腐敗撲滅を謳い、多くの国民が薄々感づいていた不埒な行動をとる悪者を次々と捉えてはさらし者にしていったあのシーンは勧善懲悪の何ものでもありません。

つまり、政治家とは時としてこのようなウルトラ技を使うことで国民の心理をつかみ、圧倒的な支持を得ることが出来るようです。但し、これには賞味期限という問題が生じます。世の中、そんなにうまくいく話ばかりが転がっているわけでもなく、一国家のドンが突然、歴史を変えるほどの能力を持ち続け、任期満了まで全うすることはなかなか困難であります。

安倍首相が一時期の人気を博さなくなったのもアベノミクスの効能が薄れてきたことで反発するボイスがあちらこちらから相対的に聞こえやすくなっているからでしょう。習近平国家主席は9000万人近くいる共産党員の一部から美味しいおまけを取り上げ、質素なものに変えたためにその権力構造にうっすらとひびが入ってきた気がします。「中国南方都市報」の習近平国家主席への風刺が話題になっているようですが、これなどはかつてなかった動きであります。

ではドナルド トランプ氏。過激な発言の数々をみているとやはり私は半沢直樹や同じ池井戸潤の作品のドラマで花咲舞が手を握りしめて「黙りません!」というパタン化された展開の心地よさに水戸黄門と同じものを感じます。

カナダはマルチカルチャーな国家として有名ですが、最近の中国人の不動産買い漁りに長年住んでいる白人は辟易としています。自分たちの作り上げたルールを無視し、金と権力で今までのやり方を変えるそのスタイルに声なき抵抗を示しています。次々とホテルや著名な大型ビルが中国人の手に落とされていく中でカナダ人は非常に複雑な気持ちになっており、その反抗の一つとしてビザの仕組みを変えてしまいました。かつては永住ビザはお金で買えましたが今はもう、無理であります。

トランプ氏の多くの発言はアメリカの国益を訴えています。メキシコ国境問題やイスラムだけではありません。彼は日本にも決して良い思いはしておらず、パートナーとして応分の責任を押し付けたいと考えています。この発想を政治家の論理として考えるとつじつま合わせが難しいのですが、ビジネスマンの観点からアプローチするとなんとなく彼の言わんとしてる論理が見えてきます。

彼は「アメリカ株式会社」をもっと利益体質にしたい、そのためには今まで投資をしてきた子会社の日本は十分儲かっているのだから本社のアメリカに配当をよこすべきである、と言い換えられます。メキシコの不法労働者はさしずめ、漏れていた無駄遣いを止める経費節減でしょう。イスラムはハッカーでしょうか?

トランプ氏へ徐々に各方面からの支持が強まっているのは誰のための大統領になるのか、という目線が非常にわかりやすく、演説はアメリカ人にロックコンサートの如く陶酔させるように聞こえるのだろうと思います。この流れを今しばらくは止めることはできないとみています。唯一、可能性としてはクルーズ氏とルビオ氏で調整して早い時期に一本化するならば抵抗勢力として復活するかもしれません。が、トランプ旋風はかなり影響力と持続力があるとみています。

支持政党がない無党派の人が4割以上とされる中で今回の大統領選挙をマーケティングキャンペーンに捉えるならば顧客層の拡大のために無党派のハートを射ることで圧倒的な支持を得ることが可能となります。「心に残るあの言葉」とは聞いた瞬間えっと思ってもしばらく考えるとなるほどな、と思わせるスルメのようなものだと思います。

揺れ動くアメリカ国民の動向でトランプ氏が一番気を付けなくてはいけないのはアメリカは移民国家であることを忘れてはいけないことでしょう。アメリカの国益が全てのアメリカ人に100%うなずけるものなのか、それが最後、クリントン氏との決戦のポイントとなる気がします。スコットランド独立投票でも最後は過激な行動よりイギリスのお仲間に残してもらうことで収まりました。半沢直樹は証券会社に出向となりました。過激なお祭り騒ぎは好きだけどずっとそれが続くとうんざりする、といつか気が付くでしょう。トランプ氏は大統領選までポンプアップし続けることができるか、それがキーとなりそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月3日付より