【映画評】セーラー服と機関銃 卒業

渡 まち子
セーラー服と機関銃(通常盤Type-B)

高校三年生の星泉は、元・目高組の組長として伯父を殺した敵を機関銃で襲撃する大事件を起こした過去を持つ。だが今では、組を解散、さびれた商店街でメダガ・カフェを営む店長となり、普通の女子高生としての毎日を過ごしていた。だがニセモデル詐欺に巻き込まれた友達の相談を受けた事から、悪辣新興ヤクザの存在を知り、再び危険な世界に足を踏み入れることに。泉はかつて敵対した浜口組の幹部・月永と手を組み、黒幕・安井の元へと乗り込んでいく…。

赤川次郎の小説を原作に、角川映画40周年記念作品として華々しく作られた「セーラー服と機関銃 卒業」は、Rev.from DVLの橋本環奈が主演する、痛快アイドル映画だ。かつて薬師丸ひろ子が「カ・イ・カ・ン」とつぶやいたそのセリフも律儀に登場する。セーラー服のスカート丈はグッと短くなったが、女子高生がヤクザの組長になるという意外性と、弱いものの味方で悪をやっつけるという構図はまったく変わらない。

安藤政信演じる黒幕の安井は、ヤクザというより実業家で、麻薬入りのクッキーを売りさばくという小手先の悪だけでなく、学生の就職あっせん、老人ホームの建設、不動産業に製薬会社までグループ経営して都市開発を進めている。さらに警察や市長まで抱き込んで、さびれた地方都市を街ごと乗っ取ろうとしているのだ。こんな現代的なヤクザに対し、泉たち目高組はまるで昭和の残党のごとし。長谷川博己演じる月永と共に、義理と人情でつっぱしるのだから、ちょっと苦笑いする。せっかく21世紀に続編を作るのだから、スマホやITで対抗する現代っ子らしさがほしかったところである。とはいえ、これはあくまでもアイドル映画。いかにヒロインを魅力的に見せるかが最大のミッションだ。“天使すぎる”アイドル、橋本環奈の美貌を最大限に引き出すため、これでもか!とばかりにアップを多用する。何しろ、彼女は千人に一人の逸材の天使。この演出こそが正しいのだ!
【40点】
(原題「セーラー服と機関銃 卒業」)
(日本/前田弘二監督/橋本環奈、長谷川博己、安藤政信、他)
(アイドル礼賛度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年3月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。