日本と中国―生活の質の格差

2016年03月10日 08:15

中国の所得水準が高まったことはお馴染みの爆買を見ても分る。沿岸都市部に限れば1万ドルクラブの仲間入りも遠くない。そこで中流層以上の生活水準は、家電製品等モノのレベルに関する限り日本と遜色がない。大都市で見かけるドイツ製高級車の数は日本より多いくらいだ。

だが生活の質の面を見ると日本との格差は未だとてつもなく大きい。大気汚染、不自由な言論空間、飲めない水道水、低い公衆道徳、偽物の横行、汚いトイレ、不親切な鉄道他。爆買の中国人も二度三度来日すれば、モノ以外に様々な体験を求めることになる。その時祖国と日本の生活の質の格差を知って驚くことになる。

大気汚染
中国の大気汚染源は元来工場、発電、暖房用の石炭燃料であったが、最近の急激な悪化は自動車の普及による所が大きい。日本で光化学スモッグが問題になった1970年前後より遥かにひどい。

飲めない水道水
水道水はそのままでは飲用に適さないので煮沸して飲むか、別途ミネラルウォーターを購入する必要がある。そのミネラルウォーターにも偽物が横行しているから始末が悪い。

低い公衆道徳
先日「港の見える丘公園」に隣接する神奈川近代文学館前の広場でテニスをしている親子3人を見かけた。「スケートボードをしてはいけません」の掲示はあったが「テニスをしてはいけません」の掲示はなかった。だがこの掲示が「スケートボードに限らず公共空間を独占的に使用してはいけません」という意味であることは日本人なら分る。話し声で中国人と分った。この中国人が仮に日本語が読めたとしても「テニスをしてはいけないとは書いてない」と開き直ることだろう。
地下鉄では我先に乗ろうとするので降りるのに一苦労する。
街中でささいなこと(多分)で口論しているのを見かけるのも公衆道徳が低いためだろう。

日本には「人を見たら泥棒と思え」、「旅の恥はかき捨て」の格言があるが、これを実践しているのは中国人であって、日本人にはむしろ「渡る世間に鬼はない」「武士は相身互い」「情けは他人のためならず」の方が身についている。

偽物の横行
ATMから引き出したお札でも安心できない。スーパーのレジ横には偽札鑑別機が設置してある。中国の最高額紙幣が100元(約1700円)とさほど高額でないのも偽札流通の恐れからだ。
偽ブランドの横行は世界中で知られている。

汚いトイレ
山東省泰山に登ったことがある。孔子、秦の始皇帝、漢の武帝と同じ風景を見たのだといさか感慨にふけった。だが下山し、汚いトイレを利用した時お金を請求されて現実に引き戻された。「お金を取るならもっと清潔にしとけ」と言いたくなった。

不親切な鉄道
日本では3分遅れてもアナウンスがあり謝罪があるが、中国では30分遅れても理由の説明もなければ謝罪もない。
これまで中国人の団体旅行者はバス移動が多かったが、個人旅行客が増えれば鉄道利用者も増えるに違いない。そうすれば日本鉄道のきめ細かいサービスにも気づくことだろう。中国人の知人とJRを利用したことがある。その知人は各駅毎の所要時間表があるのに驚いていた。
中国の鉄道駅で不便だと思うのは路線図がないことだ。勿論調べることは可能だが自分の乗る列車がどこを通るのかひと目で分からない。それが分れば「では何処其処で途中下車しようか」となるのだが。

不自由な言論空間
中国のテレビ等の放送、出版物はすべて共産党宣伝部の管理下にあるので共産党と政府批判の言説を目にすることはない。インターネットも検閲があって見られないサイトも多い。中国にGmailを送信すると届くのに何時間もかかる。

中国人旅行者が増えこうした日中両国の生活の質の違いを知る中国人が多くなれば、共産党政府の宣伝を真に受けない人の数が増えることを意味するので両国関係の長期的な安定に役立つはずだ。

青木 亮

英語中国語翻訳者

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