韓国よ、被害者意識から抜け出せ --- 長谷川 良

アゴラ

米国の著名なコラムニスト、チャールズ・クラウトハマー氏は世界日報(3月15日付)で「花開いたヘブライ文化」というタイトルのコラムを寄稿し、そこで「ユダヤ系米国人がここにきて民族のアイデンティティーをホロコーストに求める傾向が増えてきている」と警告を発している。非常に啓蒙的な内容なので読者と共に共有したい。

「ホロコーストは確かに、私のユダヤ人としての意識の中に深く根付いている。問題はバランスだ。私が心配するのは、ホロコーストの記憶が、米国でユダヤ教徒であることの支配的な特長として強調されるようになることだ。ホロコーストの記憶と事実を生かし続ける努力を怠ってはならないが、ホロコーストを後世に伝える遺産の中心に据えることは、米国のユダヤ人にとって悲劇だ」という。そして「被害者意識をユダヤ人としてのアイデンティティーの基礎としてはならない」と主張している。

ユダヤ民族の歴史は迫害の歴史であり、ディアスポラと呼ばれ放浪の民だった。そのユダヤ民族にとっても第2次世界大戦時のナチス・ドイツ軍の大虐殺(ホロコースト)は最も悲惨な出来事だったことは間違いないだろう。
クラウトハマー氏は、「それでも民族の被害者意識が民族のアイデンティティーとなることを恐れる。ユダヤ人は、奇跡の時代を生きている。ユダヤ人の国家を再建し、ヘブライ語を復活させ、ヘブライ文化はユダヤ世界全体に行きわたり、花開いている」と強調し、ヘブライ文化に民族のアイデンテイティーを見出すべきだと主張しているのだ。

当方はこのコラムを読んで日本の隣国・韓国をすぐに想起した。韓国民族も過去、多くの大国、強国の支配を受けてきた。民族には自然に被害者意識が定着したとしても不思議ではないが、その被害者意識が最近では民族のアイデンティティーとなってきているように感じるからだ。

政府主導の反日教育が行われ、外交上は解決済みの慰安婦問題も今なお、韓国内では燻り続けている。特に、ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦の少女像撤去は実現していない。それどころか、慰安婦の犠牲者がニューヨークの国連を訪問し、慰安婦問題の日韓合意が間違いだと訴えているのだ。

当方が理解できない点は、国内ばかりか世界中に犠牲者の女性の像を設置する韓国国民の精神状況だ。慰安婦の父親だったら、娘を慰安婦とした日本側を憎むかもしれないが、その娘を象徴した像を設置したいとは考えないだろう。それは余りにも惨めだからだ。しかし、韓国国民の中には慰安婦の像を建立することに躊躇しない人々が案外多いのだ。被害者意識が韓国民族のアイデンティティーになってしまった結果ではないか、と考えざるを得ない。クラウトハマー氏がユダヤ系米国人に警告している内容だ。被害者意識の強いユダヤ人に対し、“ホロコースト・インダストリー”と揶揄する声すら聞かれるのだ。

クラウトハマー氏は迫害の歴史の中でも花開いたユダヤ教文化に民族のアイデンティティーを求めるべきだと提言している。同じように、韓国国民も歴史から継承してきた民族文化、例えば、敬天思想、白衣民族をそのアイデンティティーとして誇るべきではないか。ちなみに、自己憐憫、攻撃的な被害者意識の背後には高慢で自惚れ意識が隠れている、と指摘する心理学者がいることを付け加えておきたい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年3月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。