出揃った日欧米の金融政策からみえること

先週、今週と続いた日欧米の中央銀行の定例政策会議は想定通りの結果となりました。3月のそれは議長や総裁の記者会見がある大きな節目の会議であり、それを読み解くことは極めて重要です。今日はそれが意味すること、そして今年の行方を考えてみたいと思います。

まず、欧州は「利下げに打ち止め感」を見せたのが最大のポイントでしょう。マイナス金利を追求せず、今後、量的緩和を含む他の対策を打ち出すということであります。

次いで本日発表のアメリカの金融政策はその文言に注目すべき点があります。「economic activity has been expanding at a moderate pace despite the global economic and financial developments of recent month」とあり、斜字になっている点が強調されているのです。この部分を意訳すれば「直近の世界経済および金融状況が芳しくないにもかかわらず、アメリカ経済はそこそこ成長している」という意であります。わざわざ、世界経済がイマイチだということを強調する姿勢を見せたのはバーナンキ議長の時代にはあまりなかったスタイルです。当時はアメリカの金融政策はアメリカ中心に考える、でした。が、イエレン議長になり、グローバル経済の中のアメリカ、またそれ以上に基軸通貨としてのアメリカを意識しながら政策を決定しているところに大きな変化が見られます。

その主たる着目点は石油価格を含む資源価格の動向でありましょう。やはり本日発表になったアメリカのインフレ率は総合で年率1.0%(先月比マイナス0.4%ベーシス)となり、コア(食糧、燃料以外)は年率2.3%(前月比プラス0.1%ベーシス)となっており、物価水準は資源価格下落の影響をまだ受けている結果が出ています。 このCPIに反映しているガソリン価格はこの1年でマイナス12.5%となっており、この数字の改善がインフレ率上昇のキーになるとみているように見えます。

その為にはやはり以前から指摘していますようにドル安誘導でドル建ての資源価格を引き上げ、資源国経済を立て直すことを視野に入れているように思います。事実、FOMCの決定を受けたドル円は80銭程度円高に振れ、112円台に突入しています。また、イエレン議長の発表を受けて資源関連が一気に暴騰した点は注目すべき点でしょう。

FOMCがわざわざ斜字で強調した世界経済のモヤモヤとは具体的にどこを指しているか、ですが、私には中国よりブラジルを案じているように見えます。日本ではあまり注目されていませんが、今、ブラジルはオリンピックどころではなく、ルセフ大統領の弾劾、ルラ前大統領およびルセフ現大統領の不正資金疑惑で先日は300万人以上がデモ行進しています。ルセフ大統領の支持率は11%程度でもはや国家の体をなしていません。私は年初の10大予想でルセフ大統領はオリンピックまではこなすがその後、辞任に追い込まれると書いているのですが、まんざらでもない気がしてきました。

さて、注目は日本ですが、日銀の件は昨日触れましたのでここではあえて繰り返しません。むしろ、サミットに向けた準備会議、「国際金融経済分析会合」の第一回目で日本人に人気のあるスティグリッツ教授が2016年度経済を悲観的にみていること、そして金融政策はほぼ限界に来ていることから財政政策にシフトするよう発言していることです。どうしても消費税の話に目が行ってしまいますが、それはその結果の話でどういう前提に立っているのかを知ることが重要だと思います。

私はスティグリッツ教授の悲観論の背景をもう少し探りたいと思いますが、資源価格を理由とするならばそれは多分、心配し過ぎのような気がします。もしも構造的問題を抱える欧州の話をしているならこれは同意します。中国は全人代も終わり内需へのシフトをより明白にしながら一定の自助努力は期待できるでしょう。中国経済に関しては厳しい意見が多いのは分かっていますが、彼らも学んできているでしょう。まだ、改善の余地はあるとみています。

少なくとも3月末に向けてほっとした空気が出ることは間違いないと思います。いわゆる春めいた空気が漂うとみています。日本は3月末の株価が気になる時期になってきましたが、私は堅調に推移するとみています。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 3月17日付より