山尾政調会長を歓迎する

民主党と維新の党の合流新党である民進党は、政調会長に当選2回の山尾志桜里(しおり)衆院議員(41)をあてると決めた。国会で待機児童問題を取り上げ、安倍首相をタジタジにさせ、一躍注目を集めた若手だ。

子供を保育園に入れられずに国に不満をぶつけた匿名ブログを国会で取り上げ、安倍晋三首相を追及。政府・与党は批判の高まりを受け、急きょ対策を検討するなど対応に奔走した。

このニュースを新聞で読んで驚いたのは、週刊文春の先週合(3月24日号)で、安倍内閣参与をしている飯島勲氏がコラム「激辛インテリジェンス」で山尾氏を「民主“救いの神”」と高く評価、「民主党は山尾議員を新党の政調会長にすべき」だと提案していたからだ。

まるで、岡田克也民主党代表など同党首脳部は飯島氏のこのコラムを読んだかのように、政調会長に抜擢したのである。

山尾氏は東大法卒の元検事。裁判で培った舌鋒は鋭く、自民党の問題点を的確に指摘している。

池田信夫氏は「なぜ『民進党』には誰にも期待しないのか」というブログで、こう書いて、民進党が進めるべき政策を適切に提案している。

<待機児童の問題は、「日本死ね」という匿名ブログから国会に広がり、安倍首相も対策を約束せざるをえなくなった。……待機児童には何もしない政治への怒りがあったからだ。自民党は、投票者の過半数を占める年金生活者に奉仕する老人の党である。それに対して野党は、彼らの社会保障コストを負担する納税者の党として戦うべきだ>

 

<「資産の6割をもつ老人をますます豊かにするアンフェアな政治」を批判すれば、戦う方法はある>

自民党は老人の票ばかり気にして、本来行うべき岩盤規制の撤廃も極めて不十分にしか進めていない。これではアベノミクスの3本目の矢である成長戦略の推進もおぼつかない。

安倍首相がそこを突破しようにも、集票基盤を突き崩す力がなく、旧い自民党の体質を改革できないのだ。

民進党はその問題点を追及する政党であってほしい。それが的確ならば、民進党の支持率が上がって自民党の政権基盤が揺らぐ。安倍政権はその点を指摘して、言い換えれば、民進党の攻撃を逆手にとって、我々の支持率を維持、向上させるために、老人に都合の良い政策ばかりを推進できないと、岩盤規制の撤廃・緩和=若者向きの政策を推進できる。

今回の山尾議員の国会での追及が待機児童対策を大きく改善させるきっかけとなったように。山尾議員のような鋭い議員が政調会長になれば、岩盤規制緩和はもっと円滑に進むはずだ。

だから、山尾成長会長の誕生を大いに歓迎したい。

安倍政権をそれほど評価していない池田氏は以上の分析に不満かも知れない。だが、山尾氏のような優れた若手議員が幹部に登用されるようになって、民進党は再び、自民党に代わって政権をとれるようになるだろうか。

私は疑問である。例えば、山尾氏も集団的自衛権行使を認めた安全保障関連法を違憲と断じるなどリベラル派である。今の東アジアの安全保障・軍事状況を見て、こんなことを言っているようでは、とても政権を託すことなどできない。
飯島氏は、次のように激辛インテリジェンスを締めくくっている。

<(山尾議員を政調会長にして)国会のあらゆる委員会で質問の先頭に立たせれば、(民進党の)支持率の急上昇は請け合いだぜ。願わくは「野党」の旗印を掲げた女神として、永遠に追及して欲しいね。与党じゃ、あの質問力は何の役にも立たないからさ!>

5年5ヶ月も続いた小泉政権の際策担当秘書官として長く小泉政権を支えた飯島氏らしい結論である。小泉政権時代にも根強かった自民党の抵抗勢力を打ち破るのに、山尾氏は格好の「外圧」を提供してくれるとにらんでの礼賛だろう。

第2次安倍政権が小泉政権ばりに長続きしているのは、飯島氏を高く評価している菅義偉官房長官が飯島氏の手腕を存分に活用しながら、政権持続に注力しているからだと言われる。激辛インテリジェンスも、それを進めるための効果的なスパイスであると。