「指導者なきジハード」という視点

池内 恵

ジハード組織は兄弟など近しい関係で広がっていく、という点。先日も議論しましたが、AFPがテロ研究のマーク・セージマンに話を聞いて書いています。

セージマンは『テロリズムを理解する』(2004年)、『指導者なきジハード』(2008年)で9・11事件以後のグローバル・ジハードの基本構造について先駆的に議論を展開していた。

兄弟などでリクルートされている、ということになると、それ以前のテロよりも組織性が乏しくなる。これに対して「依然として重要なテロは組織的に、ターゲットを決めて、行われているのだ」という批判が、テロ研究の大御所ブルース・ホフマンから提起された。確かに、組織性の高いテロが無くなったわけではない。しかし組織性の低いテロの出現と、重要性の増大については、認知させる事件が続いた。

今回のテロは、指導者なきテロの基本構図の上で犯人たちが組織・動員されながら、シリアの中枢からの「指令」といった程度の組織的な関与が行われていると見られ、パリのテロではシリアからの帰還兵も直接関わっていたので、二人の論争は依然として五分五分ですね。ただ、指導者なきジハードという要素を提起したからこそ分かってくることが多いので、セージマンの議論はやはり不可欠だった。

ikeuchi
池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授


編集部より:この記事は、池内恵氏のFacebook投稿 2016年3月24日の記事を転載させていただきました。池内氏に御礼申し上げます。