新金融革命

岡本 裕明

フィンテック、ファイナンスとテクノロジーを掛け合わせた新語ですが、言葉そのものは90年代から存在していました。ビジネスとして注目されてきたのはこの1-2年でしょう。その範疇も広く、「家計簿・会計ソフトから資産運用、貸し付け、決済など幅広い。貸付ビジネス、PFM・会計ソフト、資産運用、決済、銀行インフラ系、要素技術など多岐にわたっている」(Wikiより)となっています。

この技術の発展は我々の社会を激変させるパワーがあり、今までの常識を軽く覆すことが可能となります。そういう意味ではかつてビックバンと称した証券業界の革命がありましたが、今回は証券を含め、金融そのものを変革させるさらに巨大なインパクトを与えることになると考えています。

例えば、今までは支払いはお財布から紙幣を出す、あるいは、カードで決済するといった方法が主流でしたが、スマホで決済し、その買い物のアイテムは全て家計簿として自動的に仕分けされ一か月ごとに家計簿の決算書がスクリーンを通じて見られるすればどうでしょうか?使いすぎのアラームが鳴ってくれれば無駄遣いをしなくて済むかもしれません。

数ある投資信託。どれにするか、最後、パンフレットに踊る文字で選択するか、銀行マンや証券マンの甘い言葉に乗せられることが多いでしょう。あまりにも多い選択肢がある場合、人々が選択決定できなくなることが知られています。(メニューが異様に多い店ではなかなか注文を’決められないのと同じです。)ですが、あなたの性格にピッタリの商品をきっちりお勧めしてくれるAIのロボット君の時代は既にやってきています。

ポイントで買い物の発想は単なる「お得感」でありました。10万円の商品買ってポイント10%、だから1万円のポイント貰ってその店でお得気分を満喫するわけです。が、そのポイント発行そのものを疑似通貨という視点でみれば世界はすっかり変わるでしょう。

株主優待でゲットした様々な無料券、割引券はチケット店で交換されます。そのビジネスをネットでやればどうなるでしょうか?映画のチケットをネットで売買すれば5%引きで買えるかもしれないし、図書券も今、相場は7%引きぐらいですからほぼ消費税分が得になります。今はチケット店で買わねばなりませんが、スマホでゲットして本屋の支払いもその図書券クレジットをスマホで決済できるようになればこれほど便利なことはありません。

ビットコインを扱うマウントゴックス社が倒産した際、日銀が疑似通貨を研究しているとコメントしていたのを覚えていますでしょうか?世界の多くの中央銀行は疑似通貨が世界の金融を大きく揺るがす存在になることで脅威となると考えています。そして疑似通貨も「通貨」と早速認識したのは一つに相続税など税逃れが容易くできるからであります。

一昔前、金塊を自宅の庭に埋めて相続を逃れるといった事件がたびたび起きました。金塊は一種の疑似通貨でその流通性は世界どこでも同じで、相場がしっかり立っています。金なんて金利がつかない過去の産物とあっさり片づけてしまってはフィンテックの世界も理解できません。フィンテックと金の共通点は流通とその価値の保全にあります。但し、金は持ち運びに不便であり、埋蔵量が十分ではないため通貨としての地位を持ち合わせていないだけです。その点、フィンテックを利用した疑似通貨は無限に生み出せるメリットがあり、その流通経路もITの進歩で既存の金融市場を全く介す必要はありません。

では、極論を提示しましょう。日本政府が政府発行通貨をフィンテックで疑似通貨として発行したらどうでしょうか?財政の色はすっかり変わります。なぜなら世の中の財政のメジャメント(測定)は日銀券ベースだからです。財政赤字の問題は消すことも可能かもしれません。

マネーとは商品やサービスをやり取りするための介在であり、その昔は石や貝だったりしたわけです。(今の通貨も紙切れともいえますが。)それがいつの間にか複雑な仕組みとルールが作り出されてしまいました。なおかつ、発行母体は各国の中央銀行と決まっていました。が、原点に立ち帰れば、モノやサービスへの対価の支払いを供給側が喜んで受け取れる価値あるものであれば何でもよいわけです。日本には手形という仕組みがまだ残っていますが、あれも受け取り側がこの会社発行の手形なら信用があるだろうというベースの上に成り立っているのです。

フィンテックが生み出すであろう世界は恐ろしいほどに我々の常識を覆す潜在能力を持っています。Suicaやパスモといった電子マネーのチャージが疑似通貨で行われる日も遠くないかもしれません。その時、あなたの預金は間違いなく銀行ではなく、違うところで運用されるでしょう。もしかしたらアフリカの開発資金や環境保全の資金に使うための疑似通貨かも知れません。

想像力がたくましくなりそうです。

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 4月3日付より