知財本部 検証評価企画委員会。
コンテンツ分野に関する論点整理が行われました。
テーマは3つ。1) 海外展開、2) 制作力強化、3) 教育情報化。
1) 海外展開
経産省、総務省、知財事務局が説明。
経産省によれば、J-LOP事業として2年間で3800件の支援が行われ、ローカライズ支援で73か国への発信、プロモーション支援で45か国への事業が進んだとのこと。利用事業者全体で2015年の海外売上は1249億円の増加、というデータが披露されました。
総務省は放送コンテンツの海外展開を促進するためのBEAJの設立と、インバウンド効果を見込んでのASEAN中心とする発信強化について報告。日本番組チャンネルWAKU WAKU JAPANの活用や地方発放送コンテンツの発信にも触れました。aRmaが放送コンテンツの権利処理をスタートさせたとの報告も。
知財事務局からは、コンテンツ海外発信と非コンテンツ産業とのマッチングを進めるため、クールジャパン戦略推進官民連携プラットフォームを設立するとの報告。これにはぼくも参加します。
こうした報告に対し、委員から「成果が出ている」と評価する声が上がりました。知財本部でコンテンツの検討を始めて10年以上ずっと政府は「成果が出ない」と叩かれてきましたが、支援ツール等が揃い始め、ようやく前向きな評価も現れてきたんですね。
しかし、コトはそう簡単ではない。
瀬尾さんから「非コンテンツ連携はASEANを重点とする長期政策。観光は欧米を中心とする短期政策。期間もターゲットも異なる。政策目的を再検討すべきだ。」という指摘がありました。
読売・野坂さんがASEAN以外の地域にどう政策を拡大していくのかを問うたのに対し、講談社・野間さんは、ビジネス目的なのか、周知拡大なのかを明確にし、施策を絞るべきでは、と指摘。広げるか、絞るか。
竹宮恵子さんも、海外展開の意味・目的を検証すべきだと指摘。成果が現れてくると同時に、ではそれをどう評価し、方向性を定めるのか。改めてわれわれ委員会が自分の仕事を自己点検する事態となったわけです。
2) 制作力の強化
アニメーターやゲームクリエイターの育成に関する報告がありました。これに関し、広島大学・佐田さんがクリエイティブ教育の重要性を指摘。ぼくも賛成です。
一方、野坂さんが、制作は「コンテンツが好き」というだけでは続かないのであって、産業界としてキャリアアップを示すことが重要と発言。アニメーターの待遇面の向上策を求めました。
ぼくが関わる文科省のアニメ・マンガ人材育成事業でも、いままさにそのキャリアアップ像が求められています。
セガ・岡村さんも「好き」以外のモチベーションを用意すべきとし、クリエイターが対価を得にくい構造を問題視しました。アニメに関しては、世界の8割程度がフルCGという状況を見定めて支援策を考えるべきであり、政府の役割は技術的なソリューションの提供だと提言。
3) 教育情報化
これは座長の禁を破り、ぼくが発言しました。
「文化庁は教科書を含む教育に関わる著作権問題について幅広い議論をしている。同時に、デジタル教科書の位置づけを文科省が検討している。著作権制度の議論がデジタル教科書制度化のスケジュールの足を引っ張らぬようお願いする。」
「著作権制度の措置は時間がかかるかもしれない。その検討と同時に、集中処理機構のような、著作権処理の円滑化政策を考えるべき。関係業界と連携して、産学官で実証研究を行うなどのプロアクティブな措置があっていい。」
よろしくお願いします。
また、最後に、以下のとおり申し上げました。
「TPPの合意を受け、著作権の保護期間延長や非親告罪化など、制度面の措置がどうなるか、文化庁での議論に対し強い関心をもって臨んでいる。
同時に、それを踏まえて、海外展開等をどうするか、次の長期政策がより重要となってくる。この場でも議論を続けたい。」
よろしくお願いします。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年4月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。