ブロックチェーンという革命:『中央銀行が終わる日』

2016年04月09日 08:12


ITの世界ではいろんなバズワードが出てくるが、ビッグデータとかAIとかIoTなどは本質的には何も新しくない。それに対して、ビットコインの技術として出てきたブロックチェーンは、革命的なイノベーションだ。それはインターネットの弱点だったセキュリティの問題を、オープンなシステムで解決したからだ。

ブロックチェーンは著者もいうように「コロンブスの卵」で、公開鍵暗号とハッシュ関数という既知の技術を組み合わせ、今までの金融取引のように秘密にするのではなく、逆に取引データをすべて公開することによってセキュリティを守るしくみだ。

ここでは銀行のような全体を管理する機関はなく、P2Pで世界に分散したノードに、ブロックチェーンとして蓄積された取引データがコピーされ、少しでも改竄されるとわかるようになっている。このデータは暗号化され、取引の匿名性は守られている。

応用分野としては中央銀行のように厳格な信頼性が求められる分野ではなく、社内取引やマイクロペイメントのように軽いセキュリティでいい分野から普及するだろう。すでにシティバンクやUBSやバークレーズなどが実験的に社内で使い始めている。

ただ限界もある。ブロックチェーンのシステムはオープンソースだが、取引データは暗号化されてわからないので、不正なデータを入れることも可能だ(取引所が詐欺で破綻した)。また全世界で同じ仮想通貨を使うとデータ量が大きくなりすぎて、扱えなくなる。

しかしブロックチェーンには、金融をはるかに超える応用分野がある。日本の企業は今まで社員を囲い込んで長期的関係を守ってきたが、ブロックチェーンを使えば人間関係に依存しない信頼ネットワークの構築も可能だ。

本書はスコープが金融業界に限られて電子通貨の一般論が多く、ブロックチェーンの技術やその大きな可能性にはふれていないが、入門書としては役に立つだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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