TPP交渉過程の開示要求と途中退席という違和感

2016年04月11日 06:00

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TPP(環太平洋経済連携協定)をめぐり、本格的な国会論戦がはじまりました。しかし、交渉仮定の情報公開されず、資料が黒塗りで提出されたことから国会が紛糾しています。

●様々な環境によって変化するのが政治では

菅官房長官は8日午前の記者会見で、衆院のTPP特別委員会で民進党が政府の情報開示姿勢を批判し途中退席したことに対して「国民の皆さんにとって関心があるのはTPPの中身だ。国会で堂々と出てきて審議を行い、TPPの状況を明らかにするのが与野党問わず役割ではないのか」と述べています。

さらに、TPP交渉過程の開示要求について「外交交渉でも相手国との信頼関係があるのだから他の国との交渉過程を出せというのは無理ではないか」と反論しています。これは正論であると考えることができます。

民主党(現民進党)が政権を担っていた、2010年に「尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件」(以下、尖閣ビデオ流出事件)が発生したことは記憶に新しいところです。この事件は、尖閣ビデオ流出事件の発生時に海上保安庁石垣海上保安部が録画し、同庁および那覇地方検察庁が保管していたと思われる映像が海上保安官によってインターネット動画共有サイト「YouTube」に公開され流出した事件のことを指します。

このときには政府による情報公開が消極的・限定的であったことに批判が集まりましたが、このような過去の事案についてはどのように説明をするのでしょうか。

また、自民党が野党時代にTPPに反対していたことを批判する野党の方がいますがこれにも違和感を感じます。政治は置かれた様々な状況を勘案したうえで包括的に判断がされるものです。過去のことを取り上げても説得力はないように思います。

●ゲラの意味を理解されていますか

また野党は、西川公也委員長が出版予定の著書に関しても問題視しており、そのゲラを入手して追及をしています。私も著者の立場で申し上げたいと思います。まずゲラとはゲラ刷りの略称で、試し刷りのことです。政治家は書くことが仕事ではありませんし、そのための時間もないでしょう。閣僚経験者や党役員経験者などの著名人ならなおさらです。

出版にあたっては、印刷に先立って仮刷りを行い、それと原稿の内容を突き合わせ、誤植や体裁上の不備を修正します。ゲラは校正段階における原稿ですが、通常であれば、二校(2回校正をおこなうこと)、念校(校了の直前に、もう一度念のため行う校正 。また、その校正刷り)をおこない校了します。校了したら下版(校了になった組版を印刷工程に移すこと)に移行し書籍として完成します。

著者の方であれば、誰もが分かることですが、ゲラ段階の原稿はなんら意味をもちません。特に国会議員は多忙で原稿を書く余裕などないでしょう。出版社でライターを用意したり、インタビューをベースにして原稿を起こしますが、著者のイメージとはゲラ段階で異なることが容易に推測できます。書籍になる前のゲラについて論じても自らの考えと乖離している可能性が高いので論点になりません。

また、西川委員長の書籍が野党の知りたがっている「内実」を含むとは思えません。政治家の著書の多くは自らの活動を有権者に訴求する目的が強いからです。また、自身の政治への決意や備忘録など記憶すべき事柄を整理したものも多いでしょう。出版社にとってみれば政治に関心のある層は多いので需要が期待できるのです。

今回のこれらの主張は野党の失当と考えられます。いま政治には議論すべき課題が山積しています。国民は生活に密着した議論や、実態を照射した骨太な議論を展開してもらいたいと考えているはずです。

なお、このまま紛糾したままで、国民の支持を得られるほど甘くはないように思います。僭越ながら、自らの主張を通したいのであれば選挙に勝てば思い通りの国会運営ができますから選挙に勝てばよい話ともいえるでしょう。

尾藤克之
コラムニスト/経営コンサルタント。議員秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ)『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など多数。
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