ウーバー、ピーク時10倍請求はボッタクリ? --- Nick Sakai

2016年04月16日 06:00

朝のラッシュアワー、電車が止まった。でも、アポがあって、どうしても会社に行かなければならない。

タクシー乗り場に急ぐと長蛇の列。1時間待ってようやく自分の番がきて、タクシーに乗ると運転手がこういいます。「今、混んでいるので、料金10倍いただきます」。

さて、あなたはどう思いますか?私なら、間違いなく「ぼったくり」と思いますね。「人の足下をみて、なんとあこぎな」と。

でも、今似たようなことがアメリカで現実に起こっているのです。

配車サービスのウーバーを利用する人々にとって、混雑時に料金が引き上げられる“ピーク料金”は嫌な制度。しかし、今後なくなることはなさそうです。

米国特許商標庁(USPTO)は4月5日、ウーバーが申請していた3つの特許を認めたということです。その中に含まれているのが“オンデマンド・システムが計算した変動料金をユーザーに確認させる”という機能に関する特許。つまり、ピーク料金が適用される場合にユーザーに通知し、同意を促す機能で特許を取得したことになります。

ウーバーやリフト等の配車サービスでは、朝のラッシュ時など需要が高まった場合に料金を引き上げている。引き上げ率は数パーセントのこともあれば、通常料金の10倍に上ることもある。2015年の大晦日には通常は数十ドルの距離で、数百ドルを請求されたとの苦情がSNSにあふれました。

これは、経済学的には、合理的と説明されます。「需要と供給を均衡させるために価格を上げ下げする」。資本主義の原理のひとつです。アダムスミスの「神の見えざる手」というやつです。

でも、なぜ今こんなことになっているのでしょうか。それはICT技術の発達で、集中コントロールのコンピューターが瞬間的、自動的に計算して、町中を走るタクシーに伝えることができるようになったのです。

これをある種の人は「スマートだね」と肯定的に評価します。「野菜も果物も肉も米もマーケットで決まっているのだから、タクシーもリアルタイム価格でいいじゃないですか」と。

でも、野菜とタクシーはちょっと違います。

白菜が不作で、3倍になったとします。すると多くの人は、「じゃあ、食べないで我慢しようとか、肉だけ買おう」という選択ができます。ちょっと待てば安くなってくる。でも、交通や電力などのインフラは違います。「タクシー料金が高いから、乗るのをやめよう。会社に行くのをやめよう」ということにはならないのです。「いくら値段を払っても乗るしかない」と判断する人が多くなります。

これを、「需要の価格非弾力性」といいます。供給が限られているなかで、需要の価格が非弾力的だと、価格によって市場を調整しようとすると、価格が10倍とか100倍とかとんでもないことになります。これは市場の失敗です。

実は電力自由化が導入したばかりのカリフォルニアでも同じようなことが起きました。電力を発電する会社が容量オーバーになってしまったのに、消費者が電力を使い続けたため、価格が10倍とか20倍になってしまったのです。

思えば、アメリカはこういう「市場原理主義」を肯定的に捉えて、でもその後に副作用を実感して取り下げるということが多い気がします。いい意味でも、悪い意味でも、個人主義、カーボーイ気質なのですね。

でも日本にはそういう考えは馴染まないですね。東日本大地震でコンビニ網が寸断された時、パンを定価で売ったり、ただで配ったりすることが美談として報じられましたね。ガソリンスタンドに行列ができても、ガソリンの値上げなんかする給油所はなかったように思います。

個人的には、公共性の高い料金はあまり市場に任せっぱなしにしないで、ある程度上限と下限を儲けるべきだと思います。きっとアメリカでも大きな議論が巻き起こってくると思います。

Nick Sakai      NPO法人 Regional Task Force 理事長
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