地震で原発事故のリスクは高まるのか

2016年04月17日 02:19

熊本地震では、また流言蜚語が飛んでいるが、共産党のように「地震→原発事故」と短絡する人が多いので、軽水炉の構造を確認しておこう。


川内は福島と違ってPWRというタイプなので、配管が3重になっている。地震で壊れるおそれがあるのは、厚さ15cm以上の鋼鉄でできている圧力容器(原子炉容器)や格納容器ではなく、この配管である。

特に1次冷却水の配管は熱効率をよくするために細く薄くなっているので、定期検査でチェックするが、大きな地震が来ると破断する可能性がある。部材をいくら頑丈につくっても、接合部分に大きな力がかかるので、ここが危ない。

破断すると冷却水がもれて原子炉が空だきになるので、まずスクラム(緊急停止)をかけて運転を停止し、ECCS(緊急炉心冷却装置)で失われた水を補給する。つまり地震動が原因で原子炉の核反応が暴走するという事故は、軽水炉では(理論的には)考えられないのだ。

もちろんスクラムやECCSがうまく作動しない可能性もあるので、これが軽水炉の最大の弱点だが、福島第一はこれはクリアした。地震動は基準地震動を上回る530ガルだったが、配管は破断しなかった(国会事故調が一時そういう噂を流したが原子力規制委員会が否定した)。

ところがECCSを動かす交流電源が津波で水没し、冷却できなくなって蒸気圧が高まり、それをベントで放出したのが、放射性物質が外気に出た原因だ。これは単純な設計ミスで、日本の原発はすべて改修し、ストレステストにも合格した。

したがって規制委員会が安全審査で基準地震動を非常に高く設定しているのは、ほとんど安全性を高める役に立たない。関西電力の高浜3・4号機の700ガルというのは福島第一をはるかに超えるが、東日本大震災でも壊れなかった配管系を交換するだけだ。

耐震性は高いに越したことはないが、関電の美浜3号機では基準地震動が993ガルにも引き上げられたため、部材をすべて取り替えるコストが2700億円に達し、廃炉も検討されている。こんな無駄な工事に使うぐらいなら、南海トラフ地震にそなえて防波堤をつくれば、数千人の命が救えるだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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