北の核実験は「地震ドミノ」を誘発?

長谷川 良

米韓両国政府関係者によると、北朝鮮は5回目の核実験を実施できる準備を完了済みという。金正恩氏は5月初めに36年ぶりに開催予定の第7回労働党党大会を前に実績作りに腐心するだろうから、核実験を実施する可能性は高いと予想されている。

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▲北の過去4回の核実験ロケーション図(CTBTOのHPから)

しかし、金正恩氏は今回は核実験を控えるべきだ。もちろん、核実験が国連安保理決議に違反するからだが、それ以上に核実験がさらなる惨事を誘発する危険性が排除できなくなってきたからだ。ズバリ、白頭山の噴火だ。

熊本県で14日から連日、地震が起きている。マグニチュード7以上の地震が既に2回だ。同時に、同じ環太平洋造山帯のエクアドルでも16日、1979年以来最大となるマグニチュード7.8の地震で多数の死傷者が出ている。環太平洋周辺地殻が大きく動いている時、北朝鮮が地下核実験を実施した場合、白頭山の噴火を誘発するのではないか、といった一抹の不安があるのだ。

北の核実験の場合、2006年10月9日の1回目の爆発規模は1キロトン以下、マグニチュード4.1(以下、M)、2回目(09年3月25日)の爆発規模は3~4キロトン、M4.52、3回目(13年2月12日)は爆発規模6~7キロトン、M4.9だった。今年1月6日の4回目は核実験周辺ではマグネチュード4.8の地震波を観測している。

中韓地震専門家は中国と北朝鮮の国境に位置する白頭山(標高約2744m)が近い将来噴火する可能性があると久しく予測してきた。5年前の韓国メディアによれば、韓国気象庁は白頭山噴火の“Xデー”対策を既にまとめたという。

白頭山が噴火した場合、北朝鮮が大被害を受けるだけではなく、韓国、日本、中国など周辺国家にも火山灰が降り、同地域の飛行が不可能となる。ちなみに、北朝鮮では故金正日労働党総書記が白頭山の地で生まれたということから、白頭山を聖地としている(金総書記は実際は白頭山の地で生まれていない)。

問題は、白頭山と核実験予定地の咸鏡北道豊渓里周辺の地盤の関係だ。両者は直線で70キロぐらいしか離れていない。地震専門家に聞かないと詳細なことは分らないが、核実験が白頭山の地盤に何らかの影響を及ぼし、大噴火を誘発するのではないか、という懸念は払拭できないのだ。

韓国日刊紙「中央日報(日本語版)は「熊本地震、他人事ではない」というタイトルの18日付の社説の中で、「専門家は『超大型地震ドミノ』の前兆ではないかと警戒している。日本、東南アジア、太平洋群島、アラスカ、北・南米海岸とつながる環太平洋造山帯のあちこちで同時多発的な強震が発生しているからだ。14日夜の熊本地震を前後にフィリピンやバヌアツなど広範囲な地域で連鎖地震が発生している」と報じている。

金正恩氏は、朝鮮半島ばかりかアジア全域に大きな惨事をもたらす危険性のある核実験を行うべきではない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年4月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。