住宅金融と不確実性の評価

2016年04月26日 11:30

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住宅金融の利用者にとって、悩ましい問題は、変動金利を選ぶか固定金利を選ぶかという選択である。最終的にどちらが有利になるかは、将来の金利変動の不確実性に依存するわけである。

理論的には、変動金利型の現時点の金利と、固定金利型の金利との差は、市場における将来の金利変動の期待値を反映したものでなければならない。固定金利が高いということは、将来的に金利が上昇していくという市場期待の反映だから、金利の低い変動金利型が有利にみえるのは一種の錯覚で、将来的な金利上昇によって、最終的には、固定金利型と変動金利型の金利費用は同じになるはずだという期待が、そこには、あるのである。

もっとも、現実には、この期待仮説通りに動くとは限らない。おそらくは、期待に反するのだ。そこに、予測的な思惑が働くわけで、人が悩むのは、この予測においてである。ところが、これも理論的な問題だが、効率的な期待を超えた予測には、定義により、科学的合理性がないのだから、的中確率は五分五分である。だとすると、主観確率分布が平均の上下に大きく振れているとしても、平均としての合理的期待値は変化し得ないということである。

また、より大きな不確実性は、将来の住宅価格の推移である。もしも価格の上昇期待をもつのならば、賃貸は不利であって、多少無理をしてでも借金をして住宅取得するだろう。これは、自明である。このような期待が支配的ならば、当然に、住宅価格は先行的に騰貴し始め、賃貸の相対的有利さを高めるはずである。

このようにして、住宅価格上昇期待のもとで、賃貸の条件と取得および住宅融資の条件との間の相対価値の均等性がなりたつのでなければならない。そのうえで、実際の住宅価格が期待値以上に騰貴するか、逆に期待値ほどに騰貴しないかは、確率五分五分の問題で、期待値自体は動かないはずなのである。

住宅価格の変動について、期待の合理性を前提にすれば、というよりも理論的に前提にせざるを得ないのだが、将来の住宅価格の期待値は、分譲か賃貸かという供給形態に影響を与えるにしても、総供給量自体には中立であるように思われる。

ところが、自動車や家庭電化製品のような消費財の場合は、買うのが普通で、借りるのは稀だから、物価上昇期待のあるほうが、消費は伸びそうである。住宅についても、買った家に揃える家具と、借りた家に揃える家具とでは、多くの人が前者の場合における無駄使いをしそうだから、経済効果は、より大きそうである。

経済政策とは、要は、不確実性に対する期待の操作である。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
twitter:nmorimoto_HC
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