舛添会見、弁護士の逆ギレという「落とし穴」

2016年06月06日 20:00

どうも新田です。舛添知事の第三者調査発表会見、本チャンのところは、おときた都議あたりのブログを読んでいただくとして、広報コンサルを生業の一つとする私からは、あらま、なんじゃこりゃとズッコケた弁護士さんの対応について一言。

逆ギレで会社を窮地に落とした伝説の雪印会見

不祥事をやらかした人や組織の記者会見、歴代いろいろあると思うんですが、無駄に逆ギレすることは、ガソリン満載のタンクローリーで燃え盛る火災現場に飛び込むのと同じです。まあ、企業広報の皆さんにとって、ケーススタディとしてもおなじみなのが、2000年に関西で勃発した雪印集団食中毒事件における石川哲郎社長の「私は寝てないんだ!」発言。事件は14780人の食中毒者を出し、新人記者だった私も、和歌山県内の被害者に取材に走ったのを思い出すんですが、よもやレジェンドになった大阪の本社での会見での発言がこんな感じで飛び出しました。はい、ウィキから引用。

報道陣にこの事件を追及された当時の社長、石川哲郎は、エレベーター付近で寝ずに待っていた記者団にもみくちゃにされながら、会見の延長を求める記者に「では後10分」と答えたところ「何で時間を限るのですか。時間の問題じゃありませんよ。」と記者から詰問され、「そんなこと言ったってねぇ、わたしは寝ていないんだよ!!と発言[4]。一方の報道陣からは記者の一部が「こっちだって寝てないですよ、そんなこと言ったら! 10ヶ月の子供が病院行ってるんですよ!」と猛反発。石川哲郎はすぐに謝ったものの、この会話がマスメディア等で広く配信されたことから世論の指弾を浴びることとなった。

動画もありました。

ちなみに、この「こっちだって寝てないんですよ!」と、新聞報道史上に残る名ツッコミを入れたのが、読売大阪社会部の切り込み隊長だったK記者。彼のところにもワイドショーから後日取材依頼が入るくらい、茶の間にも注目された失言劇だったわけですが、話を戻すと、この会見を機に雪印グループの商品が一時全品撤去となり、その後のグループ会社の食肉偽装事件の余波も呼び込むなど、不祥事会見の当事者の軽はずみな言動で、会社は瀕死ともいえる窮地に追い込まれたのは、いまのオーバー30代ならご記憶のことと思います。

弁護士の壮大な逆ギレっぷり

で、過去事例の長い前置きがあって、本日の舛添さんですが、前回の記者会見で一時的にキレっぷりが復活する気配があったものの、さすがに今回ばかりは全体的にしおらしくしておりました。し・か・し、肝心要の「第三者」である弁護士の佐々木善三・ヤメ検弁護士のキレっぷりが半端なかったっす。毎日新聞の速報記事より。

会見一問一答

−−(弁護士に)今回調査にあたり、舛添氏から報酬は受けたか。引き受けた理由は。

◆佐々木氏 報酬については通常答えないことになっている。

−− 一般的に疑惑を抱える本人から依頼されて調査をするのは、客観性は保たれるのか。

◆佐々木氏 第三者委員会とは基本的にそういうものだ。

これ、字面を読むだけでも、つっけんどんといいますか、仏頂面が目に浮かびそうです。ただ、会見場に漂ったビミョ〜な緊迫感は、やはり映像でないと分からないと思うので、企業の広報担当者は、今夜のニュースか、ネット動画がニコ生のディレイあたりで観られると思うので、映像でぜひご確認ください。

いやはや、依頼人である当事者の舛添さんが折角しおらしくしているのに、第三者委員会の責任者が威丈高だったり、高圧的な態度に出たりすると、これじゃ、都民やメディアの怒りを無用に買うんじゃないでしょうかね。

ヤメ検が記者に威丈高になってしまうワケ

すべてのヤメ検弁護士がそうとは言いませんが、この佐々木センセは、特捜部副部長、仙台地検、京都地検の検事正と、そこそこのポジションまで歩まれていて、退官したのが4年前だそうですから、民間の空気が読めていなかったんだろうなと思います。

あと、特捜部の幹部だったという経歴がポイント。警察取材の場合は、キャリア以外の幹部だと、学歴とかで記者の方が勝っていて一目置かれていることもあってか、多少の配慮あるし、事件が一息ついたときの夜回り取材で「お前、腹減ってるだろ」なんて飯も食わせてくれるという人情味溢れる展開があわよくば、ございます。一方、特捜部とか検察官の取材だと彼らの方がエリートなのと、取材に行く若い記者が法律や司法制度の勉強不足もあって「君はそんなことも知らないのかね」と、余計に見下されてしまう傾向があるわけです。

かなり昔ですが、どっかの週刊誌で某新聞の特捜担当記者が正月に特捜幹部の自宅に行って、獅子舞を踊ってご機嫌を取ったことがスッパ抜かれたことがありましたけど、まあ、要は「検察VS記者」だと力関係がそれくらい検察側にあるってことです。

しかし、佐々木センセは、いまは民間で弁護士やっているのに、そのあたりの意識モードを変えられなかったんでしょうね。

対照的な弘中弁護士の記者“神対応”

弘中・麻木会見それと、まったく対照的なのが、民間でずっとやってきた弘中惇一郎弁護士。ロス疑惑の三浦さんから小沢一郎さん等、数々の難事件を手がけ、無罪も多数勝ち取っている敏腕です。

その昔、芸能界でいわゆる「山路徹・麻木久仁子・大桃美代子」三角関係騒動が勃発した折、麻木さんの代理人を務められていたんですが、大桃さんとの婚姻期間中の山路さんと、麻木さんが交際していたのかどうか、過去の“不倫”疑惑をめぐる記者会見(=写真はこちらのサイトより=)で突っ込まれた際のこと。弘中先生は、さりげなく横から顔を出して「婚姻関係が破たんしていれば、不貞とか不倫ではないという最高裁の判例もある」とボソッと一言指摘しただけで、レポーターたちの鋭い追及を一発で鈍らせ、まさに“神対応”ともいえる絶妙な効果を発揮しました(法的な解釈を巡っては異論あるようです)。

第三者でも当事者的に備える

そういうわけで、今回の問題のように直ちに違法とは言えない可能性がある事案であっても、法律的、ロジカルで「正しい」かどうかというとは別であることを認識してないとならないということです。世論やマスコミ論調という「エモーショナルな視点」に対しても総合的かつ戦略的に広報対策していないと、仮に本人が心より100%反省していたとしても、世論もマスコミの「怒り」「炎上」は数ポイントも沈静化しない、むしろ新たな火種を振りまくことは他山の石にしたいところです。

「第三者委員会」案件は各組織で流行っておりますが、弁護士が法律のプロであっても、コミュニケーションのプロとは限らないということが、企業広報さんの新たな教訓として、今後の広報会議あたりのケーススタディとして追記されそうな気がしております。具体的に、どうすればよかったのか、独自ノウハウはありますので、別のところで書く機会があれば。今回は問題提起まで。

(そろそろ、私もメルマガか、有料版noteか、オンラインサロン始めて、クローズドな場で議論するのを始めてみようかしら→独り言)。ではでは。

<関連記事(個人ブログ)>

新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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