【映画評】10 クローバーフィールド・レーン

渡 まち子
Ost: 10 Cloverfield Lane
若い女性ミシェルは、目を覚ますと、見覚えのないシェルターの中にいることに気付く。見知らぬ中年男ハワードは「君は事故に遭った。外ではとんでもないことが起きている。君を救うために、ここに連れてきた」と告げる。自らシェルターに逃げてきたという青年エメット、ハワード、ミシェルの奇妙な共同生活が始まるが、ミシェルは、外は危険だというハワードの言葉を信用できずにいた。そしてある日、ミシェルはシェルター脱出を試みるが…。

 

思いがけずシェルターの中で過ごすことになった男女の運命とその先に待つ驚愕の出来事を描く謎めいた物語「10 クローバーフィールド・レーン」。大ヒット作「クローバーフィールド HAKAISHA」の続編という位置付けだが、J・J・エイブラムス監督は今回は製作に回っている。続編とはいえ、POV(一人称視点)、発見された未公開映像、巨大モンスターといった前作の設定とは、本作は大きく異なる。例によって、厳しいかん口令(ネタバレ禁止)が出ているので、詳細や結末を明かすことはできないのだが、謎の生命体が世界中を襲撃するなかシェルターに閉じ込められたヒロインが体験するのは、疑心暗鬼に陥った共同生活の恐怖。緊張感は最初から最後まで持続する。ハワードがもしやサイコパスなのでは…との思いがふくらんでからは、密室と化したシェルターの中での心理ドラマや駆け引きが濃密で、モンスターより人間の方がよほど怖いと思うほどだ。

物語は、外も怖いが中も油断できない恐怖から、衝撃的な結末へとなだれこむ。監督は変わってもJ・J・エイブラムスのカラーはしっかりと出ていて、それでいて、前作とはまったく語り口が違うクレバーな作りに、引きこまれた。ヒロイン役のメアリー・エリザベス・ウィンステッドは「ダイ・ハード4.0」で主人公の娘を演じた女優。ジョン・マクレーンばりの白のタンクトップ姿でサバイバルを繰り広げ、りりしい姿をみせてくれた。

【70点】
(原題「10 CLOVERFIELD LANE」)
(アメリカ/ダン・トラクテンバーグ監督/メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョン・グッドマン、ジョン・ギャラガー・Jr、他)
(心理サスペンス度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年6月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。