世界一の長寿国

WHOが発表した2016年版「世界保健統計」によれば、日本人の平均寿命は83.7歳で世界一(統計を遡ることができる20年以上前からこの座を守り続けているそうです)。

このように長寿を誇る日本ですが、寝たきりの高齢者数は約200万人もいると言われています。これは、QOL向上の障害や社会保障費増大の原因となっており、昨日ブログに書いた子育て・待機児童の問題と同じく、早急に対処しなければならない課題です(http://ameblo.jp/koutamatsuda/entry-12177481391.html )。

解決のヒントは、欧米では寝たきりのお年寄りがいないと言われていることにあるのではないでしょうか。

そもそも、欧米では、“Bed is bad”(寝たきりは悪い)の思想が普及しており、それが寝たきりが少ない最大の要因になっていますが、その根底にあるのは自立した個人を尊ぶ文化です。

例えば、スウェーデンの高齢者は、親族と暮らさず、夫婦二人か、一人暮らしの世帯が97.4%(日本は55.4%)です。独立して生活している高齢者が体調を崩し、誰かの世話が必要になった場合でも、家族が全面的に介護することはないそうです。できるだけ最後まで自分の家で自分の力で暮らしたい、暮らしてほしいという考え方が根付いているのです(お年寄りに限らず、若者も義務教育を終えた16歳から親元を出て一人暮らしを始めるのが普通となっています)。

それ以外の理由として大きいのは、在宅介護の活用があります。施設で24時間介護を行うよりも、介護士が自宅を訪問する方が結局はコスト的に安く上がるということで推進されているようですが、それが結果として寝たきり老人の発生を防いでいるようです。

文化や思想を変えるというのは極めて困難ですが、日本人に見られる「お年寄りが寝たきりになるのは仕方が無いこと」という風潮は一掃していく必要があります。病気は気からという言葉がありますが、まずは「絶対に寝たきりにはならない(させない)」という強い気持ちを持つことが大切だと思います。

また、もっと在宅介護を普及させていく必要があります。厚労省も推進しようとしていますが、人材の育成や拠点の整備などへの取組をより一層強化していくべきです。

さらに、介護報酬制度の見直しも必要です。現在は、要介護認定が改善すると介護する側の収入が減ってしまい、寝たきりを増やす仕組みになっているという批判もあります。以前、同僚の山口和之さん(理学療法士でもあります)にコーディネートしてもらって、特別養護老人ホームを視察したときに感じたことですが、逆の発想にして、要介護レベルを低くしたら成功型報酬を上乗せするといったようにしていくべきです(http://ameblo.jp/koutamatsuda/entry-11932843729.html )。動作の専門家である理学療法士などをもっと社会的に活用していけば、多くのお年寄りの要介護度は確実に下がっていきます。

寝たきりの比率を減らしていくことは可能なはずです。社会が平均寿命=健康寿命に近づけるよう、あらゆる手段を講じることが必要です。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会)のオフィシャルブログ 2016年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。