南シナ海の国際紛争に対する法的判断。そして日本は。

松田 公太

7月12日、国際仲裁裁判所は南シナ海をめぐる中国との紛争についてフィリピンが行っていた申立てに対し、最終的な判断を下しました。

この申立ては、南シナ海のほぼ全域の管轄権を有するとしている中国の主張は国際法違反だとして、「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)に基づき3年前になされたもの。

国際仲裁裁判所は、国際司法裁判所、国際海洋法裁判所等と並ぶ国際紛争を解決するための機関ですが、相手方が拒んでも手続ができるのが特徴で、今回は中国が不参加でしたが適法に審理が進められました。

昨日の判断は、九段線と呼ばれる境界線の内側に管轄権や主権、歴史的権利があるとする中国の主張を全面却下するもので、「中国が、この海域や資源に対して歴史的に排他的な支配をしてきたという証拠はない」、「九段線の内側にある資源に対して中国が歴史的な権利を主張する法的な根拠はない」という極めて厳しい内容でした。

さらに、仲裁裁判所は手続が始まった後の出来事について判断できないことになっていますが、「中国が最近行った大規模な埋め立てや人工島の造成は、仲裁手続中に紛争を悪化させたり、拡大させたりしないという義務に反する」などとし、中国を強く非難しました。

この裁判には原則として上訴できず、今回の判断が最終的な結論ですが、中国は判決発表直後に「判決は無効で拘束力はなく、受け入れないし、認めない」という声明を出すなど猛反発しており、従う姿勢を見せていません。

しかし、この度の手続は国際法に則って適法に行われたものであり、不利な結果だったとしても、それは参加してきちんと主張・立証を尽くさなかった方が悪いと断言できます(もしくは、そもそもの主張が間違っているのです)。

他国との間で紛争が起きたときは、相手の言い分を真摯に聞いて合意できる到達点を模索する。当事者だけでは収まらない場合には国際法の枠組みに従い平和的に解決する・・・。それが第二次大戦後に世界各国が協力して築き上げてきたルールです。

国際社会の一員としてやっていく気持ちがあるのなら、中国は判決に従わなくてはなりません(力や威力をもってこれを覆そうなどというのは言語道断です)。

すぐの撤退は無理だとしても、これ以上の埋め立て等は完全に停止し、フィリピンを始めとする関係各国と前向きな話合いを行うべきです。

今回の件を受けて再認識したのは、国際仲裁裁判所・国際司法裁判所・国際海洋法裁判所といった制度の利用は、やはり竹島や尖閣諸島をめぐる問題の解決策になり得えるということ(韓国は、国連海洋法条約に加入する際に防御線を張っていますが)。しかるべき場所できちんとした根拠を示しながら「法に基づく主張」ができるよう、日本もしっかりと準備を進め、堂々と実行に移していくべきです。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、参議院議員の松田公太氏(日本を元気にする会)のオフィシャルブログ 2016年7月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。