天皇陛下の生前退位と京都での即位礼の可能性

2016年07月14日 07:30

天皇陛下が数年内に「生前退位」の意向を宮内庁関係者に伝えられたという報道が一斉にされた。

ただし、宮内庁長官や次長からは、「皇室典範や制度にわたる問題については内閣や国会で対応するものだ」というコメントがされている。 

まず、報道の真偽はともかくとして、陛下の生前退位は妥当である。イギリスではエリザベス女王が一生女王であり続けるといっているが、オランダ、ベルギー、スペイではここ数年、生前譲位が続いた。 

寿命が延びて100歳をこえることも珍しくなくなっている。超高齢の天皇も不都合が多いし、それ以上に高齢での即位にも問題がある。仮に陛下が100歳まで生きられたら皇太子殿下は72歳だ。

また、摂政という制度もあるが、これは、短いあいだならともかく、長期にわたるのは違和感が強い。 

しかし、生前退位の問題は、皇室制度全体に影響がある。たとえば以下のような問題も合わせて考えなくてはならない。 

①譲位後の秋篠宮殿下の地位をどう定義するか?皇室典範では継承予定者が弟であることを十分に想定していない。

②皇室典範に定められた順序であれば皇太子殿下→秋篠宮殿下→悠仁親王という順になるが秋篠宮殿下がどういうタイミングで即位されるかビジョンを持つべきではないか。あるいは即位されずに悠仁親王に直接継承されるのかは議論の余地がある。たとえば、皇太子殿下と秋篠宮殿下がそれぞれ20年ずつくらい在位されて悠仁殿下にというのも良いのではないかとも思うが。 

③雅子妃が皇后陛下としての仕事が事実上ほとんどできないことをどう扱うか?

④女性宮家の創設や旧皇族の復活をどう考えるか? 

⑤即位礼を京都でやる選択肢はないか(数年あれば準備は可能)といった問題がある。明治天皇は東京遷都の代替措置として即位礼は京都で行うように指示され、大正と昭和の即位礼は京都で行われた。戦後の皇室典範の改正で京都で行う規定は削られたが、東京で行うことが規定されたわけでなく、前例を踏襲されるべきだった。 

しかし、準備が行われていなかったので、現実的には難しく東京で行われた。しかし、数年後と言うことであれば、京都での即位礼は可能である。東京一極集中を排除する象徴的な意味でも是非とも即位礼の京都での挙行を検討すべきだ。 

誰が決める問題か?

皇室典範は憲法上、形式のうえでは国会の問題であり、常識的には内閣が発議すべきだ。その建前を前提に小泉内閣では法的根拠のない有識者会議なるものが設けられ、安易に女性・女系天皇が提言されたりした。 

しかし、憲法はなにもない白地のところに皇室制度を打ち立てたものではない。伝統的な背景をもった皇室がありそれを前提に憲法の規定があるのである。それを前提にしなければ、たとえば、憲法で「世襲」と書いてあるのを利用してまったく血縁がない人物を養子にして即位させることまで可能だ(メンバー構成が不適切だった)。

それを考えれば、皇室の意向というものも尊重されるのは当然だし、その「皇室」というのは天皇陛下一人でなく、ほかの皇族や旧皇族にまで及ぶべきだ。歴史的に見ても天皇一人の意向イコール皇室の意向ではない。 

以上のようなことを考えれば、皇室典範の改正は、総理の私的諮問機関としての有識者会議といったものでなく、新規の法律や場合によっては、皇室典範の改正などによって設置された格の高い審議会などで行うべきだし、その際に、皇室関係者の意見も聴かれるべきものであると思う。 

補足:最近、憲法改正について両陛下の反対の意向をうんぬんする話が左翼系マスコミが流しているが、とんでもない皇室の政治利用だ。天皇陛下が憲法の有効性とかだれが首相化について意見を持たれるのは元首として当然のことだ(ふたつの憲法、二人の首相のあいだでどちらが正当か争ったら天皇しか判断する人はいない)から、たとえば日本国憲法に自分が依拠するとおっしゃるのは構わない。

また、皇室の問題については。関係者としてご意向がそれなりに尊重されるのは当然だ。しかし、憲法第九条に代表される個別条文の改正について陛下が意見は反映されるべきでない。それは、イギリスでEU離脱について王室関係者の意見を忖度すべきでないとされたのと同じだ。まして、皇后陛下は憲法上は、天皇陛下と違って一皇族に過ぎない。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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