知財本部委員会。
これまで海外展開策に力を入れてきましたが、今回は「産業基盤強化策」。資金調達、取引適正化、技術開発、人材育成が論点。
経産省が地道な施策について報告。
マンガ・アニメのデジタル技術開発、プロデューサ人材育成、アニメ下請ガイドライン整備。
総務省から興味深い報告あり。
放送コンテンツ輸出は2010年66億円が2014年144億円に。成果大。うちアニメが55%を占め、アジアが67%を占める。
総務省が施策効果の検証モデルを提示。10億円の予算で波及効果93億円。インバウンド53、アウトバウンド40億円との報告。
こういうデータによる検証は重要です。
瀬尾委員:リアルをバーチャルにするだけでなく、バーチャルなコンテンツをリアルの場に展開する。制作拠点を置いて、イベントを作り、地域を活性化する。こうした組み合わせを検討することが重要。
迫本委員:市場メカニズムの基盤整備を。税・会計制度のような市場中立的な施策が重要。コンテンツは経済波及効果が大きく、かつ、文化政策・外交。広い国益という認識が重要。
いずれも完全同意します。
竹宮委員:どういう人材がどの程度必要なのか、産業界の需要を明確にしたい。人材育成の指標が必要。
杉村委員:クルマは車種というよりトヨタ、日産、ホンダという名前で売っている。コンテンツ企業も国際的ブランディング政策が必要。
さて、ここで想定外の大胆な提案がありました。
大崎委員:米フィンシンルールの導入策を考えるべき。制作会社の資金調達、テレビ番組の活性化のためにも有益。
フィンシンルールというのはかつて米国が適用していた放送局規制。簡単に言えば、放送局による番組制作・保有の規制で、いわば緩いハード・ソフト分離策。放送局に枠をハメていたことがハリウッド隆盛の大きな要因だと見られています。
日本にはフィンシンルールのような放送局規制はなく、だから放送局は制作・調達パワーを持ち、映画業界とのパワー逆転に至ったと見ることもできます。
フィンシンルールを持ち出すことは、放送局を色めき立たせることになります。それをテーブルに出せるのは吉本興業・大崎さんしかいないかなw
これに対し、放送局代表の重村さんが反発するかと思いきや。
重村委員:フィンシンルールのもととなるシンジケーションマーケットが日本にはない。テレビ局から制作会社に回る資金が放映権か制作権かを含め、議論する時期ではないか。
さすが上手です。制作・流通分離を進めるには、コンテンツを流通させる市場の形成がセットとなります。それを先に整備するというアクティブな政策が大事ですね。それ、やってみたいなぁ。
というのも、今から8年ほど前、テレビ局の番組調達規制やコンテンツ取引市場の形成は総務省で議論されたことがあったんです。結局、具体的な施策には至りませんでしたが、政策オプションとしてかなり煮詰めるところまで行きました。
コンテンツ流通市場。デジタル特区CiPで改めて構想してみようかな。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2016年7月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。