無法の陳列棚のロシアとの付き合い方

2016年07月22日 06:00

北方領土交渉は当分、棚上げに

国際社会を代表する無法国家はロシアと中国です。無法、不法行為を働いて、謝罪するどころか、国際機関の判決、判定を無視し、居直りを続けています。ロシアは国家主導でドーピングを行っていたことが分かり、国際オリンピック委員会(IOC)、世界反ドーピング機関(WADA)が五輪の参加停止を検討しています。聞く耳を持とうとしない無法国家とどう付き合うかが大問題ですね。

ウクライナ侵攻、クリミヤ併合に続き、五輪でも犯罪的なルール無視を何年も続けてきたことを知り、絶句しますね。安倍政権にとっても極めて頭の痛い問題です。ロシアという無法国家の手の内にのらず、相当な距離をおいて付き合わないと、日本自身が国際社会から非難されることになるでしょう。

ロシアの国家主導によるドーピングの実施、その隠ぺい工作は、遅くとも11年後半から15年8月まで、つまりソチ五輪(12年)の前からばれるまで続いたと、WADAは指摘しました。ソチ五輪といえば、欧米主要国のトップが開会式参加をボイコットしました。その中で安倍首相は、欧米の冷たい視線を浴びながら参加し、首脳会談もセットしてもらいました。

首相列席のソチ五輪が無法の場

日ソ関係をよくしておき、北方領土の返還につなげたいとの思いから、プーチン大統領との個人的関係を維持したかったからです。ソチ五輪でメダル量産するために、ロシア政府は筋肉増強作用がある薬物を有力選手に飲ませていたことが発覚しました。安倍首相としては、リスクを冒して乗り込んだソチ五輪が、実は、ロシアが大がかりなドーピングという禁じ手を使った偽りの祭典だったことを知るに及んで、今、どんな気持ちでしょうか。

安倍首相は5月にも、ソチで首脳会談に臨み、返還交渉を精力的に進めることで合意しました。エネルギー開発、極東のインフラ整備など8項目の協力計画を示し、首相は会談後、「停滞を打破し、突破口を開く手ごたえを得た」と、語りました。9月にも再会談することになり、「ロシアを何度も連続して訪れるのは異例。領土問題に対する強い熱意がにじむ」(読売新聞社説)など、随分と正直すぎる評価を下した新聞ありました。

北方領土は日本の領土であり、ロシアが不法占拠しています。第二次世界大戦で日本が敗北し、戦勝国として、ロシアは参戦した見返りに不法取得したようものです。ですから日本政府が「返還すべきだ」というのは、当然の要求です。そうであっても、実態をみると、ロシアが社会基盤の整備をし、ロシア国民を定住させ、実効支配をしているかのようです。簡単に返還するつもりは毛頭ないでしょう。

もともと返還する気はない

それにも関わらず、「日本固有の領土の返還を」と迫るのは、政治家として点数を稼げるからです。「もうあきらめた」とはいえないし、そんなことを口にしたら、政治生命を失います。では「返還せよ」と強く迫り続けるのがいいのか。恐らくは返還の意思はまずないでしょうから、いろいろ条件をいっては、日本からむしり取れるものは取り、ロシア自身は誠意ある態度をいつまでもとらない。そう考えるのがまともでしょう。

そんな時に発覚したソチ五輪用のドーピング問題です。安倍首相が政治的得点、政治的ゼスチャーを重視するあまり、ロシア側に利用されはしないか心配です。冷却期間を置き、しばらく関与しないほうがいいと思います。相手はなにしろ、法と秩序をあっさり踏みにじりますからね。何かを日本に約束したところで、いつか「状況が変わった」といいだすでしょう。

「プーチン大統領は窮地に陥っているから、かえって譲歩を引き出しやすい」と、いう人はいるかもしれません。違いますね。国家主導のドーピングは五輪の歴史で最大の犯罪的行為です。五輪を脅かす無法行為です。領土目当てで何度もプーチン大統領と会うこと自体が、日本の国際的な評価を落とすことをお忘れなく。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2016年7月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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