欧州イスラム情報アトランダム①

欧州でイスラム過激派テロリストによるテロ事件が頻繁に発生し出した。そこでメディアではあまり報道されないちょっとしたイスラム教関連情報を集め、読者に不定期だが報告していきたい。欧州のイスラム教の現状理解につながれば幸いだ。先ずは第1回目。

①フランス当局によると、昨年12月以来、国内の20カ所のイスラム寺院が閉鎖された。閉鎖に追い込まれた寺院では「過激な憎悪」を説教するイスラム教の伝道師の拠点だったという。カズヌーブ仏内相が1日、イスラム教評議会代表との会談で明らかにしたもの。
カズヌーブ内相とイスラム教評議会代表との会合は、フランス北部のサンテティエンヌ・デュルブレのローマ・カトリック教会で先月26日、2人のイスラム過激派テロリストが Jaques Hamel 神父(86)を含む5人を人質にし、神父の首を切り殺害するというテロ事件を受けて開かれたものだ。

フランスで約2500のイスラム寺院、祈祷室があるが、そのうち約120はサラフィー主義者の拠点と受け取られている。同内相によると、2012年以来、80人が強制送還され、外国から財政支援を受けているイスラム寺院は当局によって厳しく監視されているという。
(出典・バチカン放送独語電子版)

②イスラム教学者の Hamideh Mohagheghi 女史は6日、ザルツブルク大学ウィークで講義し、「サウジアラビアのイスラム教が欧州にとって大きな問題だ。イスラム教は過激化の可熱物を内包している」と述べた。サウジのイスラム教のスンニ派だが、その中でも最も厳格なワッハーブ派だ。
同女史によれば、ワッハーブ派について、「信者を過激主義へ誘惑するのは信仰ではない。コーランの断片的なストーリーを通じて宗教的テキストの中の暴力言語を強調している。イスラム国(IS)は、暴力の正当化に悪用している」という。イスラム教学者がサウジを名指しで批判することは非常にまれなことだ。
(オーストリアの「カトリック通信カトプレス」)

③オーストリア内務省が4日公表したところによると、イスラム過激派テロ組織ISは4日午前7時ごろ、「オーストリア国内の14カ所で爆発などのテロを行う」という内容のメールを送信してきた。ISは過去もオーストリアでテロを警告したことはあるが、今回はテロの時間、場所を初めて明確に指定してきた。
それによると、ウィーン市とグラーツ市(同国第2都市)の各5カ所、計10カ所の警察署と、ウィーンとグラーツ市の中央駅と空港の合計14カ所で4日午前 8時半から9時の間に爆弾を爆発すると通告してきた。
テロ対策特別部隊が動員され、関係警察署や空港、中央駅内を捜査したが、爆発物などは発見されなかった。ソボトカ内相は同日、「パニックになる必要はないが、警戒を強めなければならない」と述べている。「憲法保護対テロ対策局」(BVT)が捜査を開始した。
(オーストリアのメディアから)

④スイス南部のティチーノ州でブルカや二カーブで顔面を完全に隠すイスラム教徒の女性に対して罰金刑が初めて実施された。スイスのメディアによれば、クウェートからの旅行者が先月30日、キアッソで100スイスフランの罰金を払わなければならなかった。
ティチーノ州はスイスで最初の顔面隠蔽禁止を発令し、7月1日から施行された。違反者は最高1万スイスフランの罰金が義務付けられている。同州観光局は禁止令に対して余り歓迎していない。なぜならば、アラブの裕福な国からの旅行者が訪ねるからだ。
(バチカン放送独語電子版)

⑤サウジアラビア政府関係者は5日、ドイツ当局に対し、先月発生した2件のテロ事件の捜査を支援する用意があると通達してきた。それに先立ち、独週刊誌シュピーゲル電子版は、ドイツ南部バイエルン州のビュルツブルクとアンスバッハで発生したテロで犯人がサウジに拠点を置くイスラム過激派テロ組織ISの指示を受けていたことが判明したと報じた。サウジ当局が捜査支援を迅速に明らかにしたことに対し、西側情報機関関係者は驚きを持って受け止めている。(「独のテロとサウジ・コネクション」2016年8月7日参考)。
(独週刊誌シュピーゲル電子版)


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2016年8月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。