骨髄移植のドナー体験記

2016年08月15日 16:00

軽い気持ちで骨髄バンクに登録していたのですが、先日、私と適合した患者さんが見つかり、骨髄を提供しました。珍しい体験なので実際どんな手術になるのか、盆休みの暇ネタとして書いてみたいと思います。

■骨髄移植(造血幹細胞移植)とは

白血病などの重い血液の病気に対し、骨髄などに含まれる造血幹細胞を移植するものです。
HLA型と呼ばれる血液の型が一致することが必要で、兄弟間では4分の1の確率で一致しますが、非血縁者間では、数百から数万分の1の確率でしか一致しません。
HLA型が一致すればいわゆる血液型(ABO型)は違っても移植でき、もし、ABO型が違うドナーの造血幹細胞を移植した場合、患者さんのABO型は、ドナーのABO型に変わってしまうそうです。

また、患者さんは、移植の日程が決まると、抗癌剤と放射線照射で体中の白血病に侵された造血幹細胞を死滅させます。このときに浴びる放射線量は12,000mSv前後(体格や症状によって異なる)と、50%致死量の3倍も浴びます
しかし、それほどの放射線を浴びて完治した後に、自然妊娠された方もいるそうです。
血液型による性格診断も、放射能怖い病も、科学的におかしいことが分かりますね。
放射線については、既に十分に研究されていて、福島原発事故程度の放射線では何も起きるはずがないのです。

それはともかく、患者さんは体中の造血細胞が死滅した状態で私の骨髄を待つことになり、もし、「私の骨髄が届かない」となると、患者さんは大変危険な状態になりますから、弁護士立ち合いの元で同意書にサインを求められ、それ以降はドナーを辞退することは許されません。

骨髄の提供は、ドナーの完全な自由意思でなくてはならず、お互いが特定されないようになっています。ですから、同意書にサインするまで患者さんの情報は一切知らされません。しかし、同意書にサインした後、もし、知りたければおよその年齢と性別は知らされます。また、1年間の間にお互いが特定できない内容で2回までの手紙のやり取りができます。(骨髄バンク事務局のチェックが入ります)

■造血幹細胞移植の種類

  • 骨髄移植
    腰の骨(腸骨)に針を刺して骨髄を採取し、点滴で患者さんに移植します。
  • 末梢血幹細胞移植
    ドナーに薬を注射して、造血幹細胞を骨髄から血液中に溢れるほど増やしてから、
    成分分離装置で造血幹細胞だけを抽出したものを患者さんに移植します。
  • 臍帯血移植
    臍帯血に含まれる未分化の造血幹細胞を患者さんに移植する方法です。

■手術まで

ドナー登録したら、移植を希望される患者とHLA型のマッチングが行われ、最大5名の候補者が選ばれ、骨髄バンクのコーディネータから連絡が入ります。このときも、ドナーに精神的負担がないように、何人マッチしているかは知らされません。

まずは、電話で意思確認されます。(連絡は常に電話と封書ですが、メールにして欲しい!)
提供の意思があれば、検査と説明を受けるために病院に行くことになります。

最大5名の候補者の検査結果がそろったところで、患者さん(の主治医)がドナーを選びます。

ドナーに選ばれたら、弁護士立ち合いの元で、主にリスクについて説明を受け最終意思確認が行われます。家族の同意も必要になりますから、私は妻と病院に向かいました。

同意書にサインをすると日程調整を行います。

骨髄移植の場合、そのままでは貧血になるため、事前に貯血しておいて手術時に戻します。私の場合、600cc貯血する必要(患者さんに必要な骨髄の量800ccから決まりました)があったので、2回に分ける必要があり、以下のような日程の調整が必要になりました。

  • 精密検査の日程
  • 自己血採血の日程 × 2回
  • 入院日程
  • 術後検診の日程

短期間に大量の血液を抜くため、貧血にならないように造血剤を処方されます。

■入院から手術

骨髄移植の場合、3泊4日が基本になります。(末梢血幹細胞移植の場合は、5泊6日ぐらいになるようです)

手術の前日に入院します。
病棟は血液癌専門の無菌病棟になっています。
白血病などになると感染症に著しく弱くなるためで、もし、私が感染症になったら、私の骨髄を受ける患者さんは深刻な状態になってしまいます。そのためか、担当医師の専門であるからかも知れませんが、私もその無菌病棟に入院することになっていました。

前日は、血液検査、尿検査などが行われます。
手術は全身麻酔で行われるため21時からは絶食です。
脱水を防ぐため経口補水液を1000ccほど渡されて、できる限り飲み切るように言われます。

私は8時からの手術予定だったので翌朝6時に浣腸をされ手術着に着替えます。
8時に看護師さんが迎えに来られ、歩いて一緒に手術室に向かいました。
手術室に移動して簡単な説明を受けた後、点滴で麻酔されます。
もちろん、その後は麻酔が覚めるまでは記憶がありません。
おそらく、麻酔や抗生物質、補水液、貯血していた自分の血液などいろんな点滴するために、1本では足りないのでしょう。
両手の甲に点滴のルートが入っていました。

麻酔が覚めても丸一日動けないので、骨髄バンクの基準では、ここで尿道カテーテルを入れられるそうです。私が手術を受けた病院では、尿瓶でできるなら尿瓶でも良いという方針だったので、私は尿瓶でお願いしました。

手術は腰に針を通す穴を空けて、そこから角度を変えて数十回から数百回、ボールペンの先ぐらいの太さの注射針を骨に差し込んで骨髄を吸い取ります。
私の場合、「血の気が多いから」というわけではないでしょうが、たっぷりと骨髄が取れたらしく、左右1ヶ所ずつ(計2ヶ所)で済みました。(骨髄が取れにくい人は、4~6ヶ所空けることもあるとのこと)

手術は1時間ほどで終わったそうですが、私が目が覚めたのは10時ぐらいだったと思います。
10時30分頃には病室に戻されました。
頭は覚めていたので、病室に戻ったらすぐにメールしたりしていましたが、内臓は完全には覚めてないようです。全身麻酔は自発呼吸が止まるため、喉の奥に管を入れて酸素を送ります。そのため、喉に若干の違和感がありますし、とにかく喉が渇くのですが何も飲めません。しばらく酸素吸入をしながら完全に麻酔が覚めるのを待ちます。

夕方の16時頃に一度検診してもらいましたが、腸がまだ十分に動いてないとのことで、17時頃にようやく水分を飲んでも良いという許可が出て、スポーツドリンクなどを飲めるようになりました。

この時点では、つまり麻酔が完全に切れているため痛みが出る人は相当に痛いらしく、担当の先生も、看護師さんも、「痛みがないですか?」と、何度も確認してくれました。痛みが出れば痛み止めを処方してくれるそうです。私の場合は、ちょっと運動した後の筋肉痛程度のもので、痛み止めは必要ありませんでした。

元々健康体なのでこの時点で動けるのですけれど、「起き上がってはいけない」とのこと。トイレぐらい行けるのですが、尿瓶で用をたさねばなりません。尿道カテーテルよりはマシですけどね。
さらに、点滴を受けて一晩は絶食です。
おそらく、点滴にある程度のブドウ糖が入っているのでしょうが、やはりお腹がすきますし、点滴をしたまま寝るというのは、この歳になって初めての経験(苦笑)で、空腹と合わさってあまり眠れませんでした。

手術の翌日、血液検査や検診が済んだ10時ごろ点滴が外されて、ようやく朝食をいただくことができました。

私の場合、検診の結果は、ごく軽い貧血と、37℃程度の微熱で(これはほぼ全員に起こるそう)、自分が思っているより体には負担がかかっていたようです。
昨晩眠れなかったこともあり、昼寝をしながらダラダラと過ごしました。

手術から2日後、血液検査と検診の結果、何も問題がなかったため10時30分頃には退院できました。

それから数週間後に、術後検診に行って終了です。

■感想

肉体的、経済的な負担は、決して軽くないです。

良かったことと言えば、大病を患う前の健康体で、いずれ必要になるであろう入院や、全身麻酔による手術を経験できたことぐらいです。

私の場合は、先生が上手だったのか痛みは、「患部を触れば痛い」程度のものと、動いたときちょっとした筋肉痛が1週間ほどあったぐらいで、大したものはなく退院した翌日から日常生活に戻りました。
(個人的には、局部麻酔で十分じゃないかと思うが……)
しかし、長く痛みが取れない方もいるらしいです。

一切の費用は患者さんの負担になり、交通費と、テレビカードなどの費用として5000円の支度金がもらえます。しかし、休業補償などはありません。

骨髄移植の場合、

  • 説明と事前検査、意思確認のため病院に行く
  • 最終確認のため病院に行く(家族同伴・弁護士立ち合い)
  • 精密検査のため病院に行く
  • 自己血の採取のため病院に行く × 2回
  • 3泊4日の入院
  • 術後検診

※ 末梢血幹細胞移植の場合、自己血の採血がない代わりに入院日数が多くなります。

と、結構な回数(6回 + 入院)病院に通わなければいけません。移動時間、待ち時間を含めると、半日はつぶれてしまいます。ですから、多くの場合、「休めない」「休業補償がない」ということが問題になるでしょう。

通院回数や、入院日数を聞いて辞退される方も多いらしく、移植を希望されている方の9割以上に適合者が見つかるようですが、実際に移植ができる人は6割前後しかいないようです。
つまり、3割前後の患者さんが、「適合者が見つかった!」という希望が見えた状態から、「辞退されてしまった……」と、地獄に突き落とされている状況です。
ただでさえ難病で弱っている人にとっては、精神的にかなり厳しいだろうと思います。

例えば、私は適合判定は2回目で、1回目は患者さんの都合でキャンセルになりました(私には理由は知らされませんが、間に合わなかったという不幸な理由である可能性も……)。今回は補欠に選ばれていました。つまり、私より適している方がいたわけですが、辞退されたようです。

もちろん、細胞を貰う側からすればできる限り若い細胞を貰いたいに違いないでしょうから、私のような年寄りにお鉢が回ってくるのは、あまり良い状況とは言えないはずです。
骨髄を提供できるのは、生涯2回まで(もし血縁者に患者が出たときは、さらに1回できるらしい)ですが、私の場合、短期間に2回も適合者が現れたので、また見つかる可能性も高い。若い人の辞退が続けば、私のような年寄りが、もう一度、提供しなければならないかも……。

患者さんに必要な骨髄の量も、採取できる骨髄の量も体重で決まります。
つまり、せっかくHLA型が一致しても、ある程度の体重(体格)がないと必要量が採取できない可能性がありますから、女性より男性、年齢は若い方が向いています(55歳までです)。ですから、若い男性サラリーマンが提供できるぐらいの休業補償を、国から一律に助成金として出しても良いのでは

※ 自治体ごとに助成金を出しているところもありますが少ないです。
http://www.jmdp.or.jp/documents/file/02_donation/donor_municipality160615.pdf

iPS細胞などの再生医療が確立されれば、このような治療はなくなると思います。
しかし、確立されるまでは必要な治療法です。移植を希望される方全員が受けたとしても年間2000件程度でしょうから、国から見れば大した金額ではないと思うのですけれど……。

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生島 勘富
株式会社ジーワンシステム

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