【映画評】栄光のランナー/1936ベルリン

2016年08月18日 06:00

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アメリカの貧しい家庭に生まれ育った黒人青年ジェシー・オーエンスは、陸上選手として類まれな才能を発揮してオハイオ州立大学に進学する。そこで出会ったコーチのスナイダーと共に、オリンピックを目指してトレーニングに励むジェシーだった。アメリカ国内での人種差別に耐えながらも、妻ルースの支えもあり、ついに1936年のベルリンオリンピックの代表選手に選ばれる。だが当時のアメリカはナチスへの反発から五輪参加ボイコットの動きが高まっていた。さらに黒人であるジェシーには、人種差別政策を進めるナチス政権下のオリンピックに参加することへの疑問や不安もあった…。

1936年のベルリンオリンピックで、4個の金メダル獲得という偉業を成し遂げたアメリカの陸上選手ジェシー・オーウェンスの知られざる実話を映画化した「栄光のランナー/1936ベルリン」。オリンピックにはさまざまな逸話があるが、ナチス政権下のベルリン五輪で、アーリア人種の優位性を唱えたヒトラーを怒らせ、人種を超えてヒーローになったアスリートの実話はひときわ輝いている。だが差別が横行していた時代、敵はナチスの蛮行だけではなく、母国アメリカで受けた人種差別もまた、耐え難いものだった。それを乗り越えての栄光の軌跡は、文字通り、波乱万丈である。

ジェシーを支えたのは3人の人物。白人ながらジェシーの才能を評価し、精神面でも経済面でもジェシーをサポートしたコーチのラリー・スナイダー。献身的に夫を支えた妻のルース。それから映画では後半に登場し、初めてのオリンピックにとまどうジェシーを助け、後にジェシーと友情を育んだドイツ人ライバル選手のルッツ・ロングだ。映画なのですべてが真実とは思わないが、卑劣な人種差別の時代の中でも黒人のジェシーを支えた人物がいたことは希望と言っていい。

栄光を手に帰国したジェシーを待つのは、相変わらずの差別意識だったことの苦みが、黒人の地位が向上する道のりの険しさを物語っていた。私はジェシー・オーエンスの半生をこの作品で初めて知った。リオデジャネイロ・オリンピックでどんなドラマが生まれるのかは分からないが、決して綺麗ごとだけではない五輪の歴史の中で戦ったオーエンスのような人物の不屈の精神が、現在のオリンピックの礎なのだと思う。
【65点】
(原題「RACE」)
(米・独・カナダ/スティーヴン・ホプキンス監督/ステファン・ジェームズ、ジェイソン・サダイキス、ジェレミー・アイアンズ、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年8月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。※画像は公式サイトより引用

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