「幼児の間に字を書かせる必要はない」台湾で実践の日本式保育とは?

前回、台湾の幼稚園を紹介しました台湾在住のおおたこです。今回は、前回とはまた違う日系幼稚園「子ども園」を紹介します。こちらの幼稚園は、台湾にありながらも日本に近い幼児教育をめざし、実践しています。私の次男も2歳〜3歳の時に一時利用していた園です。

活動を絞り、子どもにとって無理のないスケジュールで1日を過ごす。

同園は、台湾人の園長先生により経営されています。日本の大学で幼児教育学を専攻し、大学付属幼稚園で実習、卒業後は日本の保育園での現場を3年経験した園長先生のもとで、“日本式”幼児教育の実践を試みています。

▼年少〜年長クラスのある一日

9時〜

登園

10時〜

おやつ、排泄

10時30分〜

工作

11時〜

戸外遊び

11時30分〜

昼食

12時30分〜

お昼休み、お昼寝

14時〜

絵本読み聞かせ

15時〜

おやつ

15時20分〜

水泳

16時〜

降園

この幼稚園は日本人の先生4人、台湾人の先生3人で構成されています。他の幼稚園によくある、各活動に外部の専任の先生を招くというスタイルではなく、保育士など教育関連の資格を持つ先生達が一日の全体を見ています。

oekaki.jpgなお、アクティビティはその日のメインの活動を午前中にし、1時間に1つの活動に絞ることで、子どもにとって無理のないスケジュールに工夫しているとのこと。他の園と大きく違うのは、1歳半から受け入れ可で、週2~3回の通園も可能としている点です。

台湾の幼稚園では、たいてい毎日の通園を義務づけられていますが、同園は少しでもママが利用しやすいように、また子どもの負担を少なくするために、と通園の選択肢を設けています。(台湾の幼稚園事情については、前回詳しく紹介しています。こちらからどうぞ)

ママが利用しやすくなる理由としては、まず小さい子どもが毎日園に通うとストレスがかかり、その反動で家にいる時や休みの日に子どもの反発が起こり、ママが逆に大変になってしまうことがよく見られるからです。次は、費用面です。毎日通う場合、前回の幼稚園で取り上げたように、日本円で6万円近くかかりますが、週2などで通う場合は、半額ほどの額で通園可能であるからだそうです。

 

学びの時間をほしい親のニーズから年長クラスは転園も。園児の年齢割合がややアンバランスなのが悩みの種。

とはいえ、台湾にある限り、保護者からは少しでも“学びの時間”を設けてほしいとの声もあります。学習面を考えて、年長の頃には少しでも“勉強”する幼稚園に子どもを転園させることを決断する保護者も少なくないのが現実問題としてあるそうです。
そのため年長、年中の園児は毎年5~6人程度に対し、年少、それより下の年齢の子どもが30人程度と、4歳以上の子どもの割合が低いというのが悩みの種のようです。

tanabata.jpgでも、園長先生ご自身が日本の教育大学で幼児教育を学び、日本の保育園で働いていた中で、「幼児の間に字を書かせる必要はない」という考えを持ち、現在のやり方を当たり前のこととしてやり通しているそうです。

発達上援助の必要な子ども達、保護者へのサポートの場も。新しいプログラムを計画中。

設立から6年間、現場では日本人の保護者がさまざまな悩みを抱えているのを目の当たりにすることも多かったと言う園長先生。トイレトレーニングの悩みから、発達上援助を必要とする子どもについての相談など、多岐にわたる相談を受け、場合によっては専門医を紹介したこともあったそうです。

その現状を受け、専門医などによる育児の情報提供、発達の相談ができる場を今年度中に新しく園のプログラムの一貫として、週末などに開催することを計画しています。
言葉の問題などから、日本人の保護者が台湾の現地の病院を受診できない、育児のサポートを受けられないという状況を、このプログラムを通して、多くの保護者が安心して台湾で子育てできるようになるといいなと、私自身も応援したいと思っています。


文:おおたこ

日本で編集業5年、結婚を機に東南アジア地域での営業事務を経て、現在は台湾で主婦業、育児業のかたわら様々な媒体で記事制作、広告制作に携わっている。


編集部より:この記事は認定NPO法人フローレンス運営のオウンドメディア「スゴいい保育」より、2016年8月25日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「スゴいい保育」をご覧ください。