トランプ候補、討論会で本選結果の態度を保留

2016年10月20日 18:30

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ネバダ大学で19日(現地時間)、第3回米大統領候補の討論会が開催されました。過去2回の誹謗中傷合戦に辟易した方も多かったでしょうが、世紀の舌戦はこれで最後となります。

討論会で、トランプ候補は討論会終盤で受けた質問で敗北した場合に受け入れを拒否する可能性を残しました。「その時まで保留する(I will keep you in suspense)」と回答するにとどめ、クリントン候補から「恐ろしいわ(horrifying)」と反応を誘っています。

クリントン候補は、相変わらず鼻をすすり水を何度も口に含みマイクやテーブルを触り続けるトランプ氏への攻撃の手を緩めません。メディアを含め不正だと非難するトランプ候補に対し「アプレンティス(トランプ氏のリアリティ・ショー)がエミー賞を受賞しなかった時も『不正があった』と訴えていた」と振り返ります。トランプ候補がその後で「受賞すべきだった」と素直に感想を付け加えたのは、漫才コンビのようでした。

トランプ候補も負けていません。クリントン財団を取り上げクリントン候補がカタールやサウジアラビアなど女性差別が横行する国から寄付金を受けたと批判しました。また、トランプ財団は寄付金の100%を慈善活動に活用していると明かしたものです。クリントン候補は、クリントン財団が寄付金の90%をハイチなど支援を待つ国や地域に振り向けてきたと説明。トランプ候補は確定定申告を行っていない初の大統領候補であるため、同氏の発言は確認する方法がないと切り返しています。

ハイライトは、トランプ候補が「私ほど女性に敬意を払っている男性はいない」と発言したところでしょうか。観衆を苦笑の渦に巻き込んだことは言うまでもありません。クリントン候補に「プーチン露大統領の操り人形(puppet)」と言い放てば、「そっちこそロシアの操り人形だ!」と激しく反論する始末。ツイッター上で大いに盛り上りました。

互いを醜く罵り合うシーンは過去2回より少なかったとはいえ、やはり米大統領候補の討論会というより、クイズショー”あなたは小学5年生より賢いかな?(Are You Smarter than a 5th Grader?)”といった趣きは残りました。特に、トランプ候補は政策の実現性を語る場面が少なかった。討論会の最初の最後に握手を交わさなかったのは、握手に値しない人物とするクリントン陣営の作戦だったのかもしれません。女性票を確保したいクリントン候補にとっては、賢明な判断と捉えられたのでしょう。

お馴染みCNN/ORC世論調査では今回の勝者もクリントン候補でした。

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(出所:CNN)

ただしトランプ候補のツイッターによると、保守派メディアのワシントン・タイムズではトランプ候補が77%でクリントン候補の17%を大きくリード。トランプ陣営の選対最高経営責任者がトップのブレイトバートと関係が深いドラッジ・レポートもクリントン候補が74.9%で圧勝していました。

討論会最終日の内容は、テーマ別にざっくりと以下の通りです。

  1. 最高判事、銃規制、同性婚
    クリントン候補:→引き続きオバマ米大統領が指名したメリック・ガーランド氏の名前を言及せず、「非常に適任な人物」と表現する程度。こちらで指摘したように、不人気ぶりが一因か。最高裁判事は同性愛者や女性や家族の権利を守る人物を指名すると発言、女性票の盤石化につながる見通し。銃規制をめぐっては銃保持に関し合衆国憲法修正第2条を「支持する」と発言したが、規制強化をアピール。
    トランプ候補:→銃所持の権利維持を明言、中絶反対(pro-life)の立場を明確化し保守派層取り込みを狙う。同性婚には反対を表明し、オーバーグフェルVSホッジズ(最高裁で5対4にて同性婚を連邦政府として認める判決が下された)を撤回させるような人選を指名する可能性を指摘。なお最高裁判事に関し、12人の候補者リストを公表済み。
  2. 中絶
    クリントン候補:
    女性の権利を守るとし、安全で合法で利用可能な中絶を擁護する立場(pro-choice)を貫徹。1976年に成立したハイド修正法(中絶に関わる補助金を支給しないよう規定)の撤回を求めると明言
    トランプ候補:
    →中絶に反対(ペンス副大統領候補も)。女性の堕胎権利を保障するローVSウェイドでの判決を覆す可能性に言及し、州政府に決定を委ねる方針を示す。
  3. 移民
    クリントン候補→これまで国境間警備に携わり上院議員として国境間の安全保障に投票してきたとし、包括的移民プログラムに国境警備が含まれると説明。トランプ候補のメキシコ訪問に触れペニャニエト大統領は建設費用を支払わない意思を明らかにしたと指摘。また不法移民を経済に取り込むべきと主張。トランプ候補のように不法移民を違法に扱う企業により、労働市場へのダメージを低下させると発言。トランプ候補が建設したホテルには中国製の鉄材が含まれていたと指摘するのも忘れない。
    トランプ候補:
    →国境間に壁を建設したいと繰り返し、国境警備隊や移民税関捜査局(ICE)も支持していると説明。移民が犯罪薬物を持ち込んでおり、悪い輩(bad hombre、後者はスペイン語で大統領選のディベートで初登場)を追放しなければならないと回答。オバマ米大統領自身、不法移民を何千万人と強制送還し、クリントン候補も壁建設に票を投じたと発言。クリントン候補の無力ぶりをアピール。不法移民は正当な市民権獲得のプロセスをたどる外国人にしてみれば、不公平であるとも述べた。
  4. プーチン露大統領、サイバーセキュリティ
    クリントン候補:トランプ候補をロシアの操り人形(puppet)だと指摘。17の民間、軍関係の情報機関は、ロシアは政府中枢部からサイバー攻撃を仕掛けていると判断したと明かす。
    トランプ候補:
    →クリントン候補はオバマ政権より移民を550%増やす見通しと指摘。ロシアと手を組んでISISに対抗するのは良い手段と発言。クリントン候補は臆病で、ロシアの好き勝手を許していると主張。
  5. 核問題
    クリントン候補:
    →サウジアラビア、日本、ドイツ、韓国に核兵器の開発を勧め、米国が核を保有しているのならば使うべきとのトランプ候補の考えは恐ろしいと発言。
    トランプ候補:
    →米軍は日本やその他の国を防衛費用はもう払えないとしクリントン候補はそうした見解を核兵器保有の推奨にすり替えていると主張。
  6. 経済、雇用
    クリントン候補:
    →最低賃金の引き上げや、高等教育に技術を盛り込むなど教育の充実化、12.5万ドルの世帯の公立大学費用を無償化するプランをあらためて紹介。トランプ候補の計画は富裕層や企業への減税や優遇を盛り込むため債務を20兆ドル増やし、格差を生み出すと主張。TPPは最終案が雇用、米国民の所得、安全保障の問題で条件をクリアしなかったとし、大統領就任後も環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を批准しないと明言
    トランプ候補:
    北米自由貿易協定(NAFTA)やTPPなど貿易協定の合意をめぐって再交渉、あるいは撤回すると発言。減税についてもあらためて言及。減税策を通じ向こう10年間で2500万人の雇用を創出するとし、成長率は5%超えもありうると回答
  7. 枯渇する給付金制度
    クリントン候補:
    →富裕層や企業への増税を通じ、社会保障信託基金の資金を増やす。
    トランプ候補:
    →減税策で成長を刺激する(司会者からは給付金の補填につながらないと指摘)、医療保険制度改革(オバマケア)を撤回し新たな制度を設けると主張。

(カバー写真:C-Span)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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