10月ベージュブック、「不透明性」がカムバック

2016年10月21日 06:00

yasuda1020

ベージュブックをおさらいしていきます。

米連邦準備制度理事会(FRB)が19日に公表したベージュブック(8月30日から10月7日までカバー)は、引き続き経済活動の拡大を確認した。ダラス地区連銀がまとめた今回のベージュブックでは総括として、地区連銀は前回に続き経済活動が「緩慢(modest)あるいはゆるやか(moderate)」に拡大したと報告。前回と比較すると、一部で心もち下方修正がみられた。9月20~21日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文議事録など年内利上げへ着々と準備を進めるが回復には勢いが乏しく、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「高圧経済」に言及した理由が垣間見れる。

なお2015年12月に利上げを開始する直前の10月ベージュブックの総括は「穏やか(modest)」な拡大としつつ、個人消費や労働市場は上方修正していた。特に労働市場は「「引き締まった(tightened)」との表現を使用し、前回分や今回分と符合する。

(経済全般)
地区連銀は「緩慢(modest)」なペースの拡大を報告した。ほとんどの地区連銀は「緩慢」あるいは「ゆるやか」と表現しつつ、NYは「変化なし(no change)」。前回と比較して、セントルイスとカンザスシティ、ダラスの3行は「改善した(improved)」だった。見通しをめぐって地区連銀は概して「前向き(positive)」で、「わずかからゆるやか(slight to moderate)」なペースを予想した。前回の「ゆるやか」より、下方修正している。

(ドル高をめぐる表記)
ドル高をめぐるネガティブな表記は総括にて2回。前回までは2回連続でゼロだった。各地区連銀からは前回のダラス1行の1回から、今回は2行増え4回に増えている。表現は以下の通りで、前回のダラスにクリーブランドとリッチモンドが出戻りで加わった。

・クリーブランド「設備投資の減速、ドル高、エネルギー部門の弱さが製造業の生産を抑制している」・リッチモンド「トラックと鉄道サービス業は、過剰供給とドル高により低迷」・ダラス「輸出が減退し、海外需要とドル高が背景」、「ドル高と軟調な海外需要の向かい風を受け、メキシコ湾岸の化学業者はまちまちな需要環境を報告」

(中国)
中国というキーフレーズが登場した回数は2回連続でゼロとなった。2015年9月に初めて中国が盛り込まれた当時の11回から徐々に減少し、1年経過して漸くゼロへ戻した格好だ。

(全体のキーワード評価)
今回、総括部分で使用されたキーワードの登場回数(同じ単語の変化形を含む)は以下の通り。3月公表分のベージュブック以降、「不透明性」はゼロだったが、今回は商業不動産のリース部門にて米大統領選への不透明性につき懸念が上がっていた。

本選まで20日を切る現状、クリントン候補勝利の確率は20日時点で92%。
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(出所:New York Times

「増加した(increase)」→18回<前回は19回
「強い(strong)」(注:強いドルの表現を除く)→8回>前回は13回
「緩やか(moderate)」→4回>前回は14回
「緩慢(modest)」→10回<前回は14回
「弱い(weak)」→8回<前回は4回
「底堅い(solid)」→1回>前回は0回
「安定的(stable)」→2回>前回は1回
「不透明性(uncertain)」→0回=前回は1回

主な項目の詳細は、以下の通り。

(個人消費)
個人消費は「まちまち(mixed)」と報告。前回の全体的に「ほぼ変わらず(appeared little changed)」から下方修正した。

(製造業)
製造業活動は「地区連銀によって相当分かれた(varied)」とし、前回の「横ばいあるいはわずかに上向いた(flat or slightly up)」から変更した。

(労働市場、賃金、物価)
雇用は「ひっ迫したまま(remained tight)」とし、前回の「ひっ迫した」から時間の経過を表す文言を示すにとどまった。ペースも「ゆるやかに拡大した(expanded at a modest pace)」と報告し、前回から変更していない。

賃上げ圧力は一部のセクターで上昇したものの「控え目(modest)」とし、前回の「横ばいから力強い(flat to strong)」から後退した。フィラデルフィアは特殊技能職、セントルイスとサンフランシスコは人不足から未経験の職で賃上げを確認し、ボストンでは小売や観光で賃上げ圧力が増した。NYでは賃金交渉が積極的に行われ、サンフランシスコでは取り下げられた福利厚生などが復活したという。米9月雇用統計で確認したように、エネルギー関連の雇用減少は減退した。

インフレ自体は全体的に「穏やか(mild)」で、前回の「緩慢(modest)」から若干の上方修正となった。

(建設、不動産)
建設と不動産活動は「拡大(expanded)」したものの、前回の「一段と拡大した(expanded further)」から引き下げた。ただし見通しについては、いくつかの地区連銀から「楽観的(optimism)」が報告されている。商業不動産での活動はリース部門で「改善した(improved)」ものの、いくつかの地区連銀からは米大統領選という不透明要因への懸念が挙げられた。

(エネルギー、農業関連)
エネルギー関連は原油価格が40~50ドル台で安定的に推移するなか、「安定の兆し(signs of stabilization)」を確認した。前回の需要は「低下し続ける(continued to decline)」ものの、安定の兆しが見えつつあるから上方修正されている。石油生産地で知られるダラス連銀では採掘/掘削活動が「増えた(increased)」。

農業は3回連続で「まちまち(mixed)」、数地区連銀が方策を報告したが、前回と同じ商品価格の下落が農家の所得を抑制しているとの指摘がみられた。

(カバー写真:Michael Zanussi/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年10月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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