【映画評】闇金ウシジマくん ザ・ファイナル

渡 まち子


10日で5割(トゴ)という違法な高金利で金を貸し、返せない客を徹底的に追い詰める金融屋・カウカウファイナンスの丑嶋馨。そのウシジマのもとに、中学時代の同級生の竹本が金を借りに訪れる。かつての親友の出現に驚くウシジマは「他を当たれ」と竹本を追い返す。一方、美容業界のカリスマ女社長は、弁護士の都陰を利用してウシジマからの借金を踏み倒そうと画策。宿敵のライバル・鰐戸三兄弟ら、過去の因縁がからみ、ウシジマは、封印した過去に直面することになる…。

違法な高金利で金を貸す闇金業のウシジマと彼のもとを訪れる欲に目がくらんだ人間たちのドラマを描く人気シリーズの最終章「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」。真鍋昌平の人気コミックの「ヤミ金くん編」をベースにしている。何といっても見所は、ウシジマの知られざる過去が明らかになることだ。中学時代のウシジマの生活はなかなか悲惨なのだが、そこには若くして人生の悲哀を悟ってしまったウシジマのルーツがある。ウシジマはもちろん、右腕である柄崎との出会いや、盟友で情報屋の戌亥、宿敵の鰐戸三兄弟、女闇金の犀原茜らも含めて、若手キャストが中学時代を熱演。中でも14歳のウシジマを演じる狩野見恭兵が素晴らしい。冷めているのに熱い心を持つ若きウシジマは柄崎と共に命を懸けたケンカに挑むが、その前に柄崎の母親手作りの食事を囲むシーンでみせる笑顔にはグッときた。

情け容赦ない貧困ビジネスに放り込まれた心優しい竹本の運命と、ウシジマの過去の因縁、心の底に隠したウシジマの優しさが交錯するドラマは見応えたっぷりだ。いっそ女社長のエピソードを抜きにして、ウシジマの過去のドラマだけで構成してほしかったと思ったほどだ。ともあれ、闇金という裏社会で生きる非情な男のドラマは、どこまでもハードボイルドなファイナルを迎える。ラスト、さまざまな思いが入り混じる、山田孝之の複雑な表情が見事だった。
【75点】
(原題「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、綾野剛、永山絢斗、他)
(非情度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2016年10月23日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookより引用)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。