「美智子さま―心なき安倍政権へ」と女性誌暴走

2016年10月27日 18:00
女性自身

「美智子さま 生前退位への痛み」。センセーショナルな文字が浮かぶ「女性自身」の中吊り広告(zassi.netより引用:編集部)

週刊誌「女性自身」の広告を見て目を疑った。『美智子さま「生前退位」への痛み!-心なき安倍政権へ「戦争の記憶」公開』という驚愕の見出しである。わざとどの言葉がどうつながるか曖昧にしてあるが、「美智子さま」と「心なき安倍政権へ」という言葉をつなげた印象を与えようとして仕組まれた悪質なタイトルだ。

内容は、

「生前退位という言葉に美智子さまは衝撃を受けられたが、この言葉は安倍政権が使ってそれをNHKが使ったに違いない」

「女性宮家や皇位継承について宮内庁は政府に訴えてきたが政府が先延ばしにしている。そうした思いやりのない対応に対しての『痛み』が美智子さまのお心のどこかにあるのではないか」

「皇室典範の改正は棚上げにして、平和憲法のシンボルが不在になったスキに憲法改正に動き出すのではないか」

といった趣旨の激しい言葉が並ぶ。

このところ政治問題について左派系マスコミが両陛下を政治利用することが目立ち、象徴天皇制の危機を招きかねないが、それにしても、この「女性自身」の見出しは酷い。しかも、中吊り広告などでもそのままスルーされて出されているのは大問題だ。

これでは、陛下の意向に政府が反しているとして二・二六事件を起こした青年将校や、それを煽った極右マスコミの再現だ。まことに憲政の危機で、クーデターを煽っているに等しい。

私は以前から、天皇陛下は、二つの点では政治的意向を表明できると主張している。

①どの憲法が天皇陛下が拠っている憲法なのか(たとえば日本国憲法は無効だとかそんなことををいうのはおかしいということ。陛下がよるべき憲法は誰も決められない)。

②複数の首相が私が国会で選ばれたと主張する場合に、憲法にのっとってどちらが正当な政府か(少なくとも現在は天皇陛下以外に複数の首相が現れた場合に誰が首相か決める機関がない)。

そして、皇室関係の問題については、関係者の一人として意見を仰ったり発言されることはあっても良いと思う。ただし、これは、ほかの皇族についても同様にその権利があると思うし、最終的には政府が独自の判断で決めるべき問題で陛下の意向にそう必要もないし、それを盾に決定するのもよろしくない。

現在の憲法であろうがほかの法律であろうが、それが良いものだと擁護することはすべきだが、改正に対して否定的であるような意見をいうことは絶対にあってはならない。もちろん、ある法律が憲法に違反するのでないかとかいう意見も仰ったりしては象徴天皇から外れてしまう。

ところが、この女性自身の記事は、両陛下に憲法改正を阻止してもらうように影響力を行使することを求めているのである。また、皇室典範の改正や生前退位の問題について、両陛下の意向に従うようにすべきと圧力をかけている。

さらに、皇后陛下を持ち出してきているのもまことに質が悪い。憲法をどのように見ても、天皇陛下は上記のようなことを含めて、政治的な権能が微かだが残っているが、皇后陛下は礼遇上はともかく、政治に関与するべき立場でない。

こんな意見をこともあろうに左翼とかリベラルを自称する勢力が主張しているのは、信じがたい。
強いて言えば、陛下の政治介入を煽って、皇室制度に混乱を生じさせようということなのだろうか。

いずれにせよ、生前退位の問題にしても、陛下のお言葉は、あくまでもひとつの希望としてのものであって、あくまでも政府が独自の立場において検討して欲しいということであろう。このラインでやって欲しいということは、象徴天皇制を大事にして来られた陛下が仰るはずもない。

しかし、このような形で悪用する輩がいるとなると、あのような形でのお言葉を出されたことまでも象徴天皇制を守るために仇になってしまわないか憂慮されるのである。

 

※アイキャッチ画像は宮内庁サイトより(編集部)

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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