テスラの仕掛ける太陽光・蓄電池革命

2016年11月07日 06:00

大統領選も間近に迫った米国からニュースです。10月28日にテスラ社のイーロン・マスクCEOは、米国ロサンゼルスのユニバーサル・スタジオ・ハリウッドで、新しい屋根用太陽光発電パネル「ソーラー・ルーフ」とバッテリー蓄電システム(家庭用の「パワーウォール2」と商用・企業用の「パワーパック2」)を発表しました。

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テスラウエブサイト・プレスリリースより画像引用

斬新な太陽光パネルと一体化した化粧屋根タイルを、TVドラマ『デスパレートな妻たち』の舞台となった家々のセットの屋根に取り付けて、記者をあっといわせるスタイルは、Steve Jobsが世を去った今、マスクの独壇場です。実際、マスクが登場するまでの間、それが太陽光パネルだと気付いた人は皆無であったそうで、機械的・無機質なパネルを自然に見せる、彼のこだわりが現れていますね。私は好きです。マスクのそういうショーマンシップ。

それはさておき、私がもっと驚いたのは家庭用リチウムイオン電池システム「パワーウォール」のさらなる価格破壊です。Powerwall 2.0の容量は、元の製品が持っていた14kWhに比べて2倍以上で、マスク曰く「Powerwall 2は、米国の標準的な4ベッドルームの家の、電灯や、コンセント、冷蔵庫などへ1日中給電できる十分なパワーを持っている」ということです。パワーウォール2にはインバーターが内蔵されていて、従来型は別個にハードウェアが必要だったのですが、新型は搭載したインバーターと太陽光パネルとの連携で、太陽光を電力に変換してくれます。そしてそのお値段、恐らくパナソニック製の蓄電池28kWhとインバーター込み込みで推定約60万円、1kWh当たり2万1千円(テスラは価格未発表)。

この価格がどのくらい衝撃的かをご説明します。日本の1世帯当たりの毎月の電気使用量は約420kWhで、電気料金では9千円、1年間で11万円で、1kWh当たり約22円です。この数字を覚えておいてください。

今、日本でも4kWの太陽光パネルが100万円程度で売られています。これでも世界的に見れば相当高いのですが、7ー8年前の四分の1にまで価格破壊が起こっています。これに、このPowerwall 2.0の60万円を足すと、160万円。電力会社に頼らないで、自分の家で電気を発電して貯めて使う、いわば電気の自給自足セットがこのお値段でできてしまいます。このセット、20年持つとして、1年当たりのコストは8万円です。なんと、電力会社に払う1年分の電気料金11万円よりも3万円安くなります。つまり、電力会社のネットワークに頼るよりも、自分で作ったほうが安くなってしまいます。燃料代はただです。これは分散型エネルギーエネルギーシステムと言われていて、本当に商用的に普及したら、大規模な発電所はいらなくなるので、天動説から地動説に変わるくらいのパラダイムの大転換です。

さらに、いいニュースがあります。来年から、自宅で発電して余った電気を電力会社に売れるような市場ができます。このマーケットで、一般家庭も電力取引でさらに儲けることができます。今、日本政府はヴァーチャルパワープラント(VPP=仮想発電所)を作ろうとしていて、こうした家庭用の発電・蓄電システムを奨励しています。詳しくは経済産業省のエネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会のサイトをご覧ください。

また、電気自動車にも繋げば、自分の家の電気も車も全て自然エネルギーエネルギーで賄うことができます。究極のエコであります。パリCOPの厳しい目標も軽々達成。ガソリンが要らなくなり、中東からの原油輸入に頼らなくて済むようになるので、日本の貿易収支はすごく黒字になり、マクロ経済も良くなります。自動運転との組み合わせで、限界集落とのほぼ無料交通手段を確保できて、少子高齢化にも対応可能です。

しかし、悪いニュースもあります。世の中、革命を起こすのはそんなに容易ではないということです。実は、テスラJapanは既に直販の日本語ウエブサイトでPowerwallを売っています(2.0はまだのようですが)。クリック一つで、あなたの家に蓄電池が届きます。しかしです!据付はしてくれません。Powerwallをコンクリート基礎に乗せて、自宅の配電盤に電線を繋ぎこんでというところは、自分で工事店を見つけて来なければなりません。そして、恐らくその設置工事を自分で頼むと無茶苦茶ぼったくられます。下手したら工事費だけで100万円くらい吹っかけられて、せっかくの価格破壊による黒字化計画が水泡に消えてしまいます。この業界、建築業界の一部なのですが、中小事業者がひしめき合って、多重下請が当たり前の、ピンハネ横行、不透明な業界なので、明朗会計をしてくれません。

しかし、経済産業省も設置業界の透明化と低コスト化に躍起になっているようですし、総裁任期延長を果たした安倍首相としても、2020年のオリンピックへの第三の矢の経済成長の目玉にこの蓄電池システムを据えようとしている様子なので、頑張っていただきたい。テスラという価格破壊の黒船の到来で日本の夜明けも近そうです。私も辛抱強くウオッチしていきたいと思います。

Nick Sakai  ブログ ツイッター

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