LINEの役員、田端信太郎さんの、ポケモンGOをやった事が無い経営者はダメだというツイートが話題となっています。
「意識が高い」はずのG1経営者会議で参加者の挙手アンケート、ポケモンGO1度もやったことない人が7〜8割という結果に衝撃を受けました。休みの日に「お勉強」は大好きなのに、生活者としての健全な好奇心が皆無です。そりゃ日本企業のデジタル化がトンチンカンなわけだわ。まさかLINEも?。 https://t.co/CBrPjkcOlq
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2016年11月3日
もちろん、世間の主な反応は、田端さんへの賛同です。ブロガーのイケダハヤトさんも、ポケモンGOを触った事の無い経営者の会社は終わっているという記事を書かれていました。
面白かったので紹介。クソリプがすごい。/「ポケモンGO触ったことない」経営者が率いてる会社とか、終わっとるがな。 : まだ東京で消耗してるの? https://t.co/4gWg16Jm86 pic.twitter.com/7m0gOantqF
— イケダハヤト (@IHayato) 2016年11月3日
私は喉元まで賛成という言葉が出かかる状態なのですが、口では『反対』としか言えない微妙な感想を持ちました。
なぜなら、ポケモンGO的な流行り物に敏感であるべきだという論調は、金太郎アメ的な発想しかでき無い人を増やすように思ったからです。本当に必要な事というのは、『自分自身のやりたい事を明確にし、それに対するアンテナを持つ』ではないかと私は思うんです。それがあれば、ポケモンGOを必ずしもやる必要は無いと思います。
さて、私は放送作家をやっていて、たまに、放送作家の卵などの企画を見て指導する講師の仕事もやっています。そういう講座で、例えば『朝のニュース番組の新コーナーを考える』というような宿題を与えたりしています。
そういう時に私が強く感じるのが、『放送作家になるために』と、流行りの有名人や番組の情報収集に精を出している生徒の企画は、個性がなく金太郎アメ的で面白く無い確率が高いという事です。ひどい時には、宿題をカンニングしたり、一緒に考えたりしたのかなと思うほど、似ている企画を出してくる人がいます。
一方、『格闘技の、特に○○についての番組を作りたい!』とか、自分自身に何らかの、やりたい事や専門があると思っているような生徒は、割と面白い企画を出してきます。そういう生徒は、格闘技だけでなくスポーツ関連の最新情報はメチャクチャ網羅しているけど、前に紹介した面白く無い企画を考えた生徒より、世間全体の流行には疎かったりする事も多いです。それこそ、ポケモンGOなんかには、全然興味が無い人も中にはいたりします。
では、そんなにポケモンGOも知ら無いような専門家タイプの人が、どうして個性のある面白い企画を考えられるのかといえば、『自分自身のやりたい事を明確にし、それに対するアンテナを持つ』という事が出来ているからだと思います。一方、無個性な面白くない企画を考える流行に敏感な作家の卵は、具体的に作りたい企画などは無く、『放送作家になるための抽象的な勉強』に精をだしているだけで、自分のアンテナを持っているようには見えません。
また、最新情報なんてものは、周りの誰かしらが知っているものなので、会議などをすれば、誰かがそれについてのアイデアはくれるものです。なので、私は多少、最新情報に疎くたって良いから、『自分のアンテナを持つ』という事を大切にするようにと、生徒に口すっぱく伝えるようにしています。
さて、LINEの田端さんがポケモンGOをやってい無い経営者が多くて驚いたというのは、G1経営者会議という日本版ダボス会議を目指すという学びの場のようです。私がホームページを見る限りでは、具体的に商談をまとめたり、何か具体的な知識を得る場というよりは、『有名人の話を聞いて勉強しておこう!』とか、『学び好きな経営者人脈を広げたい!』と言うような、意識が高いという以上の細かい目的がない人が行くような『抽象的な勉強の場』のように見えました。
人間は抽象的な勉強をするという事に対しては、『自分自身のやりたい事を明確にし、それに対するアンテナを持つ』必要は全くありません。むしろ、逆に自分のやりたい事が明確すぎる人には、その目的に不必要に見える抽象的な勉強は苦痛になってしまう事さえあります。例えば、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、堀江貴文さんなどが、大学を中退したのは、強烈な自分のアンテナが在学中に出来上がってしまったからでしょう。
なので、そもそもG1会議に参加している経営者は、抽象的な勉強をしに来ている人なので、あまり明確なやりたい事・オリジナリティーのあるアンテナを持ってい無い人が多いのではないでしょうか。だから、ポケモンGOをやって無い人が多くても、私には謎には見えませんでした。それに加えて、田端さんの、そういう参加者に対する『ポケモンGOぐらいは知っているべきだ』という発言も、ちょっとピントがズレているような気がしました。
きっと、田端さんような方は、恐らく、自分のビジネスに対して、自分では気付かないような深層心理レベルで、『新しいITジビネスを始めたい』とかいう目的があって、『新しいマーケティング手法は何か?』というようなアンテナを持っているはずです。そして、そういうアンテナを持っているからこそ、当たり前のようにポケモンGOを試すという行動に行き着くんだと思います。
しかし、休みの日にお勉強のためにG1会議に参加する「意識が高い」経営者たちはきっと、『経営者であるための抽象的な勉強』は好きなだけであって、『具体的に今、自分には○○が必要なんだ!』という自分オリジナルのアンテナが弱めの人がほとんどでしょう。(だから、ポケモンGOもやっていないのだと思います)
そして、そういう人が田端さんに言われたからと流行を追い出しても、抽象的な勉強の一環としてポケモンGO的な最新情報の収集を始めるはずです。そうなると、面白い企画を考えられ無い放送作家の卵のように、きっと、金太郎飴的な、ぜんぜん面白い発想をしない経営者が大量発生するでしょう。
もちろん、放送作家と経営者は違いはたくさんあるはずです。でも、本質は同じような気がします。だから、世間は、田端さんのtwitterをきっかけに、『ポケモンGOをやらない経営者はダメだ』という空気になっているように見えますが、私は『(結果的に)ポケモンGOをやるようなアンテナを持っている経営者でないとダメだ』が正解なのではないかと思います。
そして、ポケモンGO的な流行に全く興味を持っていないとしても、独自の強烈すぎるアンテナを持っているタイプの経営者という人も存在するのではないかと思います。そして、そういうタイプの人は恐らく、『抽象的な勉強』として、ポケモンGOをブランド品を身に纏うようにやっている、意識高い系の抽象的なお勉強好きよりも、圧倒的に結果を出している人が多いのではないかと私は思うのです。
※最近、ブログではアメリカ大統領選に関する事をかいています。
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※このブログの著者プロフィール
渡辺龍太 放送作家(会話と文章の専門家)
Twitter: https://twitter.com/wr_ryota
著書:『朝日新聞もう一つの読み方』(日新報道)
紹介ブログ:朝日新聞の押し紙問題!武田邦彦教授の解説が痛快すぎる
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