電通過労死事件がきっかけとなって、日本人の長時間労働=低生産性の原因ついて議論が盛んだ。
要するに無駄な仕事が多いということなのだが、その一つは「過剰記録と口頭申し送り」である。
ここは、新規採用された中年童貞クンがいかにダメかを見せる場面なのだが、作者の意図とは別に、なぜ介護労働に時間がかかるかを示す好例となっている。
記録が「おふろ」ではダメで、「〇時〇分入浴介助 浴槽ではゆっくり楽しまれた」と書けと指導されて、記載に時間がかかって、いつまでたっても仕事が終わらないのである。
病院や保育所でも同様で、看護職や保育士たちが、とんでもなくコッテリとした記録をしている。保育所に至っては、持ち帰り残業で「記録」をやっていることがある。
今や看護師の業務の大半が、「記録」と「申し送り」に圧迫されており、患者のケアができない事態に発展している。。。。話したこと、やったこと、バイタル、治療、評価すべてを記録し、記録し記録し、、、、それを申し送りし、そして結局は何も出来ていない。。。。
こうした「過剰記録」を義務づける法的根拠は特になく、経営者が強制しているのでもない。現場が自主的に仕事を増加させている。
しかも、記録するだけではなくて、口頭で「申し送り」をやっているので、ここにも時間がかかっている。なぜ申し送り事項を文字で書くだけではダメなのだろうか?
医師は、丁寧な記録も、夜間休日勤務者への口頭申し送りもしない。
回診をすれば必ず記録はするが(医師法第二十四条による)、特に変化がなければ「著変なし」で終わりである。時たま最新状況を要約し、予測指示(こういうときはこうしてください)を書く。これだけで、何の問題もなく仕事が回る。
「過剰記録と口頭申し送り」の弊害は、時間がかかることだけではない。必要とされる日本語能力が高度すぎて、医療介護保育業界に外国人労働者を入れることができない。外国人労働者は、中年童貞クンよりも日本語ができない。
そもそも、「過剰記録と口頭申し送り」をやめれば、労働力が節約できて、外国人労働者など必要ないのだ。
井上晃宏(医師)