「隠れトランプ支持者によって勝敗が決定した」は大嘘

2016年11月12日 17:07

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「隠れトランプ支持者によって勝敗が決定した」は大嘘

トランプ大統領誕生直後、「報道の敗北、トランプの勝利 「世論調査」はなぜ外れた?」のように「隠れトランプ支持者が事前の世論調査を覆した」という報道が多数ありましたが、その実相は異なったものとなっています。

結論から述べると、トランプ大統領誕生の理由は、両陣営の支持者の投票率の違いではないか、と推測します。

2008年・2012年・2016年の大統領選挙の得票数と比較した場合、

2008年:オバマ69,498,215・マケイン59,948,240

2012年:オバマ65,915,795・ロムニー60,933,504

2016年:ヒラリー60,839,922・トランプ60,265,858

という状況であり、勝敗の境目は「オバマよりもヒラリーの得票数が圧倒的に少なかったこと」にあります。

また、トランプ氏については、モルモン教徒という特殊な宗教で保守派からの人気も低かったロムニー、正統派の候補者だったマケインとほぼ同数となっています。

更に事前の世論調査ではトランプ・ヒラリー両者の支持率は全米及び接戦州で拮抗していました。

ざっと数字を見ただけでも「隠れトランプ支持者」によって「世論調査が覆った」または「勝敗が決まった」は無理がある仮説であることは一目瞭然です。

「勝敗を決定した要因」はヒラリー・トランプ各陣営支持者の投票率の差

大統領選挙の勝敗を決した要因は、ヒラリー・トランプ各陣営支持者の投票率の差です。

元々ヒラリー・トランプの支持率差は極めて微小であり、両者の差は両陣営支持者の属性の差であったと捉えるべきです。具体的には拙稿「トランプ支持者は「白人ブルーカラー不満層」という大嘘(2016年11月1日)」をご覧ください。

上記の分析は全米支持率に基づくものになりますが、その他の調査でも接戦州でも両者の差は統計の誤差の範囲内におさまるものであり、日々の報道で垂れ流されている世論調査に反してトランプが勝ったということ自体が事実に反します。

重要なポイントは、ヒラリー支持者の年代が若年世代に偏っていたこと&有色人種におけるヒラリー支持が圧倒的に高かったこと、の2点になります。

そして、米国の大統領選挙でも若者の投票率は元々高いものではなく、有色人種でもないヒラリーが黒人・ヒスパニックらの熱烈な支持を維持できるという根拠も薄弱であったため、表面的な支持率が拮抗していても支持者内訳による質的な差異が生じることは明らかでした。

したがって、筆者は上記の記事中で年代別投票率の差とキューバ系ヒスパニック(キューバ系は伝統的な共和党支持層、メキシコ系は民主党支持層)からの得票が勝負を決めると事前に述べてさせて頂きましたが、結果もおおよそ予想通りものになったものと言えます。

筆者としては米国の世論調査について語るなら、単純データをクロス分析した上で、アメリカ政治の質的要因を考量しながら考察くらいしたらどうなの?と素朴に思いますね。案の定の結果となったため、個人的には何の驚きもありません。

トランプ氏の得票数増加は予備選挙段階から分かっていた話に過ぎない

トランプ氏側の得票数の増加についても容易に説明が可能です。こちらは拙稿「数字で分かる!トランプの大統領選挙・勝利の方程式とは(2016年5月7日)」をご覧ください。

2016年の共和党予備選挙は2012年時よりも圧倒的に多くの米国民が参加しています。2012年時の参加者総数は18,682,820名ですが、予備選挙のほぼ決着がついた5月3日のインディアナ州での予備選挙が終わった段階で参加者総数26,639,737名に激増している状態となっていました。

トランプ氏の加入によって共和党予備選挙が最高潮に盛り上がっていたことが分かります。

特に、重要な接戦州であるフロリダ州の共和党予備選挙では2012年・167万人から2016年・236万人まで増加しています。一方、民主党は2008年・175万人⇒2016年・171万人と予備選挙参加人数が減っている状況です。そのため、前回と比べた両陣営の得票数の増減は予備選挙参加者数からある程度予測することが可能な状況だったと言えます。

そして、実際にトランプ氏は大統領選本選で全米の得票数を増加させることに成功しました。一度予備選挙でコミットした有権者は本選でも投票すると考えることは当然でしょう。

ただし、トランプ氏は最終的に共和党主流派と諍いを起こしたため、一部の共和党員の得票が離れたことが控えめ目な得票増となったものと推測します。トランプ効果によって新規得票増と離反票の差し引き分だけの得票増加効果があったと言えるでしょう。

「隠れトランプ支持者」という虚構のストーリーが流布される心理的背景

実際に起きた出来事は「隠れトランプが多かった」ではなく「ヒラリー支持者が選挙行かなかった」だけです。トランプ支持者は最初から元気一杯で予備選挙に参加して世論調査にも回答しています。

では、メディア・有識者が何故「隠れトランプ支持者」」といういい加減な存在を作り出して今回の大統領選挙の結果を論評する風潮が生まれたのでしょうか。

「隠れトランプ支持者」の存在を吹聴している人々は、「トランプを支持していると言う人は馬鹿だと思われる」という偏見を前提として持っている、米国民主党系メディアのプロパガンダを信じ込んでいる人です。

つまり、自分達が予測を外した責任を「自分達が馬鹿だと思っている人たちのせい」に転嫁する見苦しい行為に戯れているわけです。一部の高学歴サークルの中で隠れトランプ支持者がいたかもしれませんが、それらの人々が大統領選挙の勝敗を決したとする論調の方向性は間違っています。

ここは重要なポイントなので明確に述べておきたいと思います。

一般に流布している話と異なり「トランプ支持者はヒラリー支持者を馬鹿な世間知らず」と思っています。

トランプ支持者の中核は独立ビジネス系の人間または自ら何らかの生産活動に従事している層の人々です。彼らにしてみたら現実を知らない規制・税金をかけてくるヒラリー支持者(特に有識者)は世間知らずでしかありません。

だから、世論調査でも約半数の人々は堂々と「トランプ支持」と回答しているのです。彼らは最初から全く隠れてなかったし、その数字がヒラリーシンパの識者の目に入らなかっただけです

トランプ氏には多少は女性問題などで恥ずかしいところはあったかもしれません。しかし、トランプ氏は元々テレビのエンターテイナーなので、共和党支持者は笑って済ませる人も多かったでしょう。彼らにとってはヒラリーの綺麗事よりも目の前の経済問題・不法移民問題などを解決するほうが先決なのです。

「隠れトランプ支持者」という概念はトランプ支持者に対する一方的な偏見に基づく概念です。

米国のメディア・世論調査機関がその存在を報じたからと言って、それを鵜呑みにしてドヤ顔で日本人に伝える日本の有識者・メディアは猛省してください。「米国の有名な世論調査屋のネイト・シルバーが『隠れトランプ支持者』で間違ったって言っているから正しい」という発想は論外です。

なぜ、有識者は「トランプ当選」を外し続けてきたのか

日本のメディア・有識者は「ヒラリー万歳の米国メディアの報道」を丸パクリして大恥かいたことを思い出した方が良いでしょう。自分の頭で考えられないなら有識者としての存在価値は低いですから。

英字情報を取るだけの舶来信仰は捨てて、自分の頭で考える習慣を日本人の有識者・メディアとされる人々には身に付けてほしいと思います。

 

本記事の内容は所属機関とは関係なく渡瀬個人の見識に基づくものです。取材依頼や講演依頼などはyuya.watase02@gmail.comまでお願いします。

*最終得票数に関しては一部数字と表現を修正しました。文章全体の趣旨に変更はありません。

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渡瀬 裕哉
早稲田大学招聘研究員、Tokyo Tea Party 事務局長

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