11月12日、行政事業レビュー公開プロセスの最終日、僕はベンチャー支援の議論に参加した。対象事業は、金融庁の「金融の仲介機能の強化」、文部科学省の「次世代アントレプレナー育成プログラム」「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」、経済産業省の「研究開発型スタートアップ支援事業」「大学の産学連携機能強化事業」「創業・事業再生・事業承継促進支援事業」「グローバル・ベンチャー・エコシステム連携強化事業」「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」「独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金」である。
なぜ、こんなにたくさんの事業が取り上げれらたのか。それは、2016年4月に日本経済再生本部が「ベンチャー・チャレンジ2020」を取りまとめたからである。本部決定をお墨付きとして、多くの事業が「我もわれもと」提案されたのだ。府省間で切り分けができているかという質問に対して、文部科学省は大学で生まれた技術の種を世の中に出す事業と人材育成に注力している、経済産業省はベンチャーキャピタルを活用して大学発ベンチャーを支援する、と回答した。ちゃんと縄張りを決めて、それぞれ侵害しないように事業を並べているから安心してほしいというわけだ。
議論にはユーグレナとペプチドリームの社長が参加した。二人は、特許庁における特許審査力が低いこと、ベンチャーに対するリスクマネーの供給がないこと、そして、ベンチャーに挑戦する人材の育成が足りないことを指摘したのだが、それらに対応できる事業にはなっていなかった。
毎年およそ30万件の特許審査請求があるが、特許庁の審査官は2000人で、一人あたり年間150件を担当しなければならない。つまり、高度な技術的思想が書かれた特許出願一つひとつを平均2日で処理しているのが現状である。それでは間違いも起きるし、審査官の机には書類が山積み状態なので、審査に時間がかかり過ぎる。知的財産立国を標榜しベンチャーを支援しようというのであれば特許庁の体制強化は必須なのだ。
根本問題をどう解決するかを考えずに、縦割り組織の縄張りの中でもっともらしい事業が雨後の筍のように推進される、政府の悪い癖が露わになった。
行政事業レビューの結論は、特許審査体制、リスクマネー供給、人材育成に取り組む全体像をまず描くべきとなった。山本幸三担当大臣も、「大企業からベンチャーが生まれるはずはない。大企業の役割はベンチャーに資金を提供することしかない。それを促進するリスクマネーの供給拡大が重要である。」と指摘された。