量の政策の誤りを認めた浜田内閣官房参与

2016年11月16日 11:30

15日の日経新聞に浜田宏一内閣官房参与とのインタビュー記事が掲載された。このなかで浜田氏は次のような発言をしていた(以下、日経新聞朝刊より引用)。

「アベノミクスの『第1の矢』では岩田規久男日銀副総裁のインフレ期待に働きかける政策が効いた」

「国民にとって一番大事なのは物価ではなく雇用や生産、消費だ。最初の1、2年はうまく働いた。しかし、原油価格の下落や消費税率の5%から8%への引き上げに加え、外国為替市場での投機的な円買いも障害になった」

「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」

2012年11月にスタートしたアベノミクスと呼ばれた大胆な金融緩和を中心とした政策は、インフレ期待に働きかける政策が効いたものの、原油価格など外的要因の障害により物価上昇が阻まれたかのような分析である。このあたりは日銀の主張と一致する。しかしである。少なくとも一時的には効いたとした量による政策効果をここにきて否定してきたのである。

学者があらたな事実が発覚したことで、考え方をあらためるということは通常であれば、当然あってもしかるべきということになろう。しかしである。浜田氏はその間違っていた政策を政府に提言した上で実行に移されてしまった。いわば実証もされておらず、むしろ以前の日銀を中心にリフレ政策は誤りであると認識されていたものを、アベノミクスというかたちで実行に移してしまった。それが4年経ってやっと浜田氏がその誤りを認める事態となった。浜田氏は次のような発言もしている。

「(著名投資家の)ジョージ・ソロス氏の番頭格の人からクリストファー・シムズ米プリンストン大教授が8月のジャクソンホール会議で発表した論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。もちろん、ただ歳出を増やすのではなく何に使うかは考えないといけない」

いまさら目からウロコもないであろう。そもそも金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるというのもおかしい。政策金利がゼロ近くになってしまったのでその代替手段として出てきたのが量的緩和ではなかったのか。ただし、量を増やせば物価が上がるという波及経路に関しての認識が誤っていたことも、ある意味立証されたということになる。

しかし、だから減税も含めた財政の拡大が必要だという理論も本当に正しいのか。リーマン・ショックや欧州の信用不安に対して、日米欧の中央銀行が大胆な金融緩和を実施したのは、財政出動に限界が来ていたためである。金融緩和がダメなら財政出動という考え方はあまりに安易すぎる。

浜田氏がデフレはマネタリーな現象だとの説の誤りを認めても、日銀が踏み込んでしまった異次元緩和は簡単に止めることはできない。ブレーキすらも掛けることが難しいことで、それとなく買入額の縮小も可能となる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という絡め手を打ち出した。しかし、これにも「オーバーシュート型コミットメント」を付けないとリフレ派の賛同は得られなかった。「オーバーシュート型コミットメント」とは安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するというものであり、これは浜田氏が認めた間違った政策を強く押し進める姿勢を示してしまったものである。

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編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2016年11月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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