米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は91.6と、市場予想の87.9を上回った。2015年9月以来の低水準に並んだ前月の87.2を超え、5ヵ月ぶりの水準を回復している。内訳をみると、現況指数が2015年10月以来の水準へ下振れした前月の103.2から105.9と、3ヵ月ぶりの水準へ改善。見通し指数も、2014年9月以来の最低となる前月の76.8から82.5へ上昇した。
調査機関中は米大統領選の直前という事情もあり株安に振れ米金利が上昇したものの、米連邦公開市場委員会（FOMC）は11月の会合で据え置きを決定したほか、利上げペースが引き続き非常にゆるやかになるとの期待感を促しセンチメントを引き上げたもようだ。金利上昇に伴い、賃上げへの楽観的な観測が高まった可能性もある。
原油先物が40ドル半ば付近で推移するなか、1年先インフレ見通しは前月の2.4％から2.7％へ上振れし、5ヵ月ぶりの高水準だった。5～10年先インフレ見通しも過去最低を更新した前月の2.4％から2.7％と、8ヵ月ぶりの水準を取り戻した。
ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は今回の結果が米大統領選の結果を反映していないと前置きしつつ「年初来平均の91.1を超えた」と評価する。インフレ見通しの上昇をめぐっては「3月に示したように、今回で頭打ちする余地を残す」と慎重だ。ただ「米連邦公開市場委員会（FOMC）が12月に利上げに踏み切る正当性を与えた」と指摘。2017年の個人消費見通しを「2.5％増」で据え置いた。10月速報値までの予想である2016～2017年で「2.6％増」を下回る水準を維持する。
ミシガン大消費者信頼感、現況・見通し共に上昇
（作成：My Big Apple NY）
・1年先の家計見通し指数 121＜前月は127、5ヵ月ぶり高水準
向上する 35＜前月は36
変わらず 47＜前月は48
悪化する 14＞前月は9
・所得と物価の伸び率に対する1−2年先の家計指数は82＞前月は79、3ヵ月ぶり低水準
所得の伸びが物価を上回る 23＞前月は19
所得の伸び率と物価が同じ 35＜前月は39
所得の伸びが物価を下回る 41＞前月は40
・所得が1年先に拡大するとの回答
今回 45.5％、直近で最低＜前月は47.7％
・1年先のビジネス見通し指数 104＞前月は103
向上する 26＞前月は23
変わらず 47＜前月は51
悪化する 22、4ヵ月ぶりの高水準＞前月は20
・1年先の失業率見通し指数 95、5ヵ月ぶりの高水準＞前月は93（低下を見込む場合に上昇）
低下する 20、5ヵ月連続＝前月は20
変わらず 52＞前月は51
上昇する 25、6ヵ月ぶりの低水準＜前月は27
・1年先の金利見通し指数 48＞速報値と前月は47
低下する 4、直近で最低＜前月は6
変わらず 29、直近で最低＜前月は34
上昇する 65、直近で最高＞前月は58
・1年先のガソリン価格指数 16.3＜前月は17.4、4ヵ月ぶり高水準（値下がりを見込む場合に指数は上昇）
下落する 4＞前月は3、直近で最低
変わらず 5ヵ月ぶりの低水準＜前月は41
上昇する 57、5ヵ月ぶりの高水準＞前月は55
・自動車購入指数 142＞前月は135
買い時 67、3ヵ月ぶりの高水準＞前月は64
分からない 8、直近で最高＞前月は7
買い時ではない 25、4ヵ月ぶりの低水準＜前月は29
・住宅購入指数 149＞前月は146、直近で最低
買い時 74＞前月は72、直近で最低
分からない 1＜前月は2
買い時ではない 25＜前月は26
・主要機器 161＞前月は157、直近で最低
買い時 77＞前月は76
分からない 7、直近で最高＞前月は5
買い時ではない 16、4ヵ月ぶりの低水準＜前月は19
――米11月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は、以下の興味深い点が浮き彫りとなりました。
1）1年先の家計見通し指数 1年先のビジネス見通し指数、所得が1年先に拡大するとの回答がそろって低下
2）1年先の金利見通し指数、1年先のガソリン価格指数、所得と物価の伸び率に対する1−2年先の家計指数が上昇
3）購入見通し指数は自動車、住宅、主要機器そろって上昇
インフレ見通しが上振れした背景もあり、自動車や住宅などの購入見通しが全て上昇しました。一段の金利上昇をにらんだ駆け込み需要が一因である可能性があります。Fedの面々も、インフレの上向きに安堵したことでしょう。
（カバー写真：My Big Apple NY）
編集部より：この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2016年11月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。
