安倍首相・トランプ会談を中立的に評価する

2016年11月21日 12:30
安倍&トランプ会談

首相官邸サイトより(編集部)

ニューヨークに立ち寄っての安倍・トランプ会談については、「一番乗り」とはしゃぐ人がいるのもどうかと思う一方、民進党からは、安住氏が「朝貢外交」といったり蓮舫代表が「どうして信頼できるか国会で話せ」と見当外れの意見を出すのも困ったものだ。

安倍首相が会談の中身についてほとんど何もいわなかったので、マスコミが憶測記事を無理に書いているので困ったものだが、このあたりが中立的だというところを書いておこう。

まず、政府がトランプ勝利について読み間違ったのでないかということについては、それは違うと思う。

そもそも、私はずっと書いてきたように、トランプ勝利の可能性は30%くらいかと思ってきたし、政府もそうだったと理解する。ただ、当初、政府がその30%の可能性への準備を軽視していると批判したことはあるが、最終的にはそうでもなかったと思う。

なぜトランプが勝ったかといえば、FBI長官がメール事件の再捜査を投票の10日ほど前になって発表したからだ。それで数%の票がトランプに動き、投票の二日前に再捜査は行わないと長官が言明したものの半分くらいしか戻らなかったというだけのことだ。

もうひとつは、投票数でクリントンが少し負けても大きな州を取れるから勝つといわれていたのが逆になったのは,クリントン側の重大な作戦ミス、トランプ陣営の作戦勝ちだった。

従って、トランプの勝利を読み違えたとかいうのは、馬鹿げている。それでは、30%程度のトランプ勝利に備えずに、国連総会出席時にクリントンとだけ会ったのかといえば、それは違う。現在の政権側を大事にしておくのは、よほど、えげつないやり方でなければそれでよい。そのことが、現在の対立陣営も政権についたら大事にしてもらえると思わせるからそれでよいのだ。

一方、トランプ陣営に対する裏での接触が不十分だったかといえば、満点ではないが、まずまずしていたのではないかと思う。

マスコミ報道では、杉山事務次官などは、クリントン寄りだったといわれているし日経新聞に拠れば、佐々江駐米大使は違ったという。日経新聞(11月2日電子版)によればこうだ。だいたいそういうことでないか。

クリントンが勝つと決めつけない方が良い。保険を掛けよう」。こう主張していたのは駐米大使の佐々江賢一郎(65)だ。公使の岡野正敬(52)らにトランプ人脈開拓を指示していた。投開票日の数日前には、トランプに近い関係者に外務省側から「勝利した時には安倍首相から電話したい」と打診。政府高官によると、トランプ側は「祝いたいと電話してきた国は初めてだ」と喜んだという。 安倍が9日夕に「電話協議」を指示したことを受け、外務省は佐々江らの面会記録などをもとにトランプ人脈に片っ端から当たり、どうにか10日朝の安倍・トランプの電話にこぎつけた。首相周辺は「投開票数日前の打診が効いた」。

岡野公使は京都出身(洛星高校)でENAの後輩でもある。私のパリ在勤時代に大使館の二等書記官を務めてていたが、そのころから誠に有能で外務省の将来を担う逸材だ。仕事に間違いあるまい。

ニューヨークでの会談についていえば、これは、安倍首相にとって軽い賭だ。いちおう異例なことだからプラスもマイナスもありうる。なぜ、異例かといえば、アメリカほど選挙と就任が離れているのが珍しいからだ。

そのなかで、次期大統領との接触は、若干は、現政権の気を悪くする可能性はある。しかし、あえて踏み切ったのは、安倍首相が世界的なリーダーの一人として振る舞うのに自信があるということだろうしそれは見当外れでもない。安倍首相はサミット参加首脳のなかでもっとも安定しており、メルケルが難民問題と英国EU脱退阻止で失敗して権威を落としたあとその地位はますます向上している。

ヨーロッパの指導者たちは、アンチ・トランプの姿勢を明確にしすぎていたから巻単位は動けない。そのなかで、トランプにTPPに参加している国々の意向をやんわりと伝え、欧州諸国などとの橋渡しをする用意があることを申し出て、そのことを形としてマスコミに見せることは、トランプにとってもこのましいソフトランディングとなる。

そして、それが成功したかどうかは、会談内容が公開されていないのだから分からない。ただ、下記の沖縄タイムスの記事はいい線だと思う。

 安倍晋三首相と次期米大統領ドナルド・トランプ氏の初会談が終わった。トランプ氏は選挙中に日本に動揺を走らせた在日米軍撤退発言などの強硬姿勢は見せず
 
(中略)日米同盟の重要性を理解してほしいと外国首脳で一番乗りで訪れた安倍氏の聞き役に回った。安倍氏がトランプ・タワーを去った2時間後、ペンス次期米副大統領がロビーに姿を現した。会談に途中から同席したペンス氏は安倍氏との会談について、「大変有意義だった」と笑顔で答え、トランプ新政権と安倍政権が協力関係を構築できる可能性を前向きに示した。トランプ氏はペンス氏と約30分間にわたり、安倍氏との会談内容について協議したが、
 
(中略)(トランプとペンス両氏が興味を示したのが)安倍氏が自衛隊の運用に関して自身の方針を説明した時だったという。 アジア太平洋地域における米軍の重要性を強調しながら日本の責任としての自衛隊配備と米軍との共同訓練などを力説する安倍氏の姿に、トランプ氏は「目指す方向は同じようだ」と笑顔で答えたという。
 
トランプ氏は、日米同盟の重要性を強調し、両国が信頼関係を構築して協力し合うことが双方の国益につながるとの安倍氏の主張に耳を傾け、ペンス氏も「信頼できそうな人物だ」と好感を示していたという。米軍撤退の可能性を指摘したトランプ氏が強硬姿勢を改めるかどうかは今回の会談では判明しなかったが、安倍氏を歓迎して受け入れたことから、今後は両者の間に信頼関係が築かれ、在沖米軍基地の増強や先島の自衛隊配備を巡り協力する可能性も出てきた。
   

だから、安倍首相が会談内容を明かさなかったのは正しい。ただし、もうひとこと記者団にリップサービスが欲しかった気はする。

それから、現在、オバマ大統領はヨーロッパやペルーで大車輪で自分のした仕事の継続を訴えて回っているが、この是非は微妙だ。彼が信念に基づいて動いているのは結構だが、すでにオバマ路線を否定する国民の審判が出たにもかかわらず、既成事実を重ねるのは、一般的には禁じ手だ。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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