民進党は政権公約に「国籍法改正」でも入れてみれば(棒)

新田 哲史
蓮舫記者会見161201

12月1日の定例会見に臨む蓮舫氏(民進党サイトより引用)

歳末に入り、年明けの解散風をそれなりに感じ始めたのか。民進党がきのう(12月1日)、次期衆院選公約のうち「経済政策」を発表したらしい。党の公式サイトには、番記者が入手しているであろう原案のペーパーは、当日中にアップロードされていないが(相変わらずネット対応が遅い)、概要は掲載されている。

日本経済立て直しには、教育・子育て充実、女性活躍、地方経済活性化が重要 細野代表代行

オフィシャル記事には載っていないようだが、産経によると、消費増税をきちんと盛り込んだ姿勢は一見「誠意」も感じさせる。

「大学まで教育無償化」「経産省解体」民進党、公約の目玉政策原案発表(産経新聞)

しかし、「経産省解体」「教育無償化」「こども国債」もろもろ実現性が危ういものも並んでいるのが相変わらず。民主党政権時代には国家戦略局構想が頓挫したどころか、既存官庁のガバナンスすら危うかった経緯を、国民は忘れていない。池田信夫からは早くも「中学生の落書き」と酷評されているようだが(苦笑)


2009年の総選挙の時だけ民主党に期待して、とりあえず票をお試しで投じた有権者の何割が果たしてこれらの公約に信頼を置けるのか、いますぐ世論調査をかけてみたいものだ。

大好きな「多様性」で公約にエッジをかけてみては?

そういえば、共同通信の最新の世論調査で安倍政権の支持率が3年ぶりに60%台に載せたのに対し、民進党は前回から0.2ポイント増にとどまる8.0%(なお自民は4ポイント増の44.9%)。295選挙区のうち、候補者を立てられない空白区が83(11月末時点)もあるという現状なのだから、年明けに総選挙になったところで、政権奪回など夢だ。

であるならば、ここは、とことん言いたい放題、振り切ってみた方がエッジが立っていいのではないか。「目玉」政策は党の顔であり、選挙PR戦略のコアコンテンツだ。経産省解体をはじめ、独自色を出したつもりだが、経済以外でも民進党らしさをとことん発揮してみればいい。

近著「蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?」(ワニブックス)でも言及したが、蓮舫氏の二重国籍問題が表面化した折、岡田前代表が「多様性の象徴」と持ち上げたことがあった。いっそそのことを逆手に取って、国籍法改正案を公約に掲げ、二重国籍を認めるようにしてみたら、党としての価値観が明確化されるのではないか。ついでに維新の求めている国会議員の二重国籍禁止法案にも明確に反対して、外交官の国籍条項廃止も盛り込み、「多様性」大好きな党の価値観が伝えられるのではないか。将来的に政権を取り返せたら、蓮舫氏も書類を出さずに済ませられるだろう。

開き直りでオリンピック返上論も面白い

いや、もっと面白いアイデアがある。「コンクリートから人へ」を体現したいなら、いっそのこと東京オリンピック・パラリンピック返上でも公約に盛り込んでみたらどうなのか?ちょうど、大手の週刊誌でもマジメに返上論を検討する記事が出て、都庁幹部がマジメに応えているぞ。先週の週刊現代の記事がおととい現代ビジネスに転載されたようだ。

「東京オリンピック返上」という選択を真面目に考えてみる

もちろん、民主党政権時代からオリンピック招致をやってきたわけだが、「自分たちの考えていたオリンピックはソフトレガシーを重視していたのに、自民党政権で進めているハードレガシー構想とは変わってしまった」などと開き直ってみたら、オリンピックの経費負担に対する一定割合の国民の潜在的な不信感を煽りまくってみるだけでも、パワー出るんじゃないか。まあ、その程度の振り切りもできないから、求心力が生まれない。現代表が前代表に対して「つまらない男」とディスったことがあったが、IR法案への対応も腰砕けな「とりあえず反対」に見えてしまい、あいかわらず「つまらない党」である。

そういえば、来週7日が、蓮舫氏と安倍総理の初の党首討論対決だそうだ。そこに向けて、観戦席は、また色々と盛り上がりそうな気配である。翌日には拙著の発売ではあるが、その中で期待を込めて書いた政局シナリオが実現するのか、なによりも、二重国籍問題で興味深いやりとりがあるのか非常に見ものである。

蓮舫VS小池百合子・書影

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民進党代表選で勝ったものの、党内に禍根を残した蓮舫氏。都知事選で見事な世論マーケティングを駆使した小池氏。「初の女性首相候補」と言われた2人の政治家のケーススタディを起点に、ネット世論がリアルの社会に与えた影響を論じ、ネット選挙とネットメディアの現場視点から、政治と世論、メディアを取り巻く現場と課題について書きおろした。アゴラで好評だった都知事選の歴史を振り返った連載の加筆、増補版も収録した。

アゴラ読者の皆さまが2016年の「政治とメディア」を振り返る参考書になれば幸いです。

2016年11月吉日 新田哲史 拝