世界に遅れる教育の改革

OECDが世界72か国・地域で2015年に実施した「国際学習到達度調査(PISA)」の結果が公表された。新聞各紙は、わが国の15歳では読解力が課題であったと報道している。記事の元ネタは国立教育政策研究所にある

朝日新聞は、読解力低下について、12月7日付朝刊の記事中で次のように言及している

文部科学省は要因について、問題表示や解答が紙での筆記からコンピューターの使用に変わったことを挙げ、「子どもたちに戸惑いがあった」としつつ、「情報を読み解き、言葉にする力で課題が浮かんだ。スマートフォンでインターネットを利用する時間が増える一方、筋だった長い文章を読む機会が減っている」(同省教育課程課)と分析する。

同じ朝刊には、「広がる「PISA型」授業 スピーチ・討論、自主性育てる」という記事も出ている。思考力、判断力、表現力といった応用力重視のPISA型授業がわが国でも広がりつつあり、「PISA型の読解力を伸ばすには、板書をノートに写させるだけの授業を脱し、生徒の自主的な学びを育てることがカギではないか」という教員の意見も記載されている。

これらを読んで疑問に感じたことがある。日本の子供は紙からパソコンへの変更に戸惑ったということだが、世界72か国・地域はそんなパソコン利用のPISAを受け入れ実施したという点である。今頃になって子供たちが戸惑うとしたら、それは日本の教育が世界に遅れているということだ。

PISAの成績上位国には、デジタル教科書の採用国が並んでいる。これは、情報社会に子供たちが対応できるようにするためだ。一方、わが国は紙の教科書を主とするという条件でデジタル教科書を容認し、2020年度からの導入を目指すという。彼我の差は大きい。我が国も、板書を写す写経のような授業から自主性重視の教育へ、一刻も早く移行する必要がある。教育への情報技術の導入は授業方法の改革を強いる。しかし、紙で長文を読む機会を増やすといった対処療法はやめるべきだ。