トランプ「大統領」のエネルギー政策(3)
「よもや」「まさか」のトランプさんが次期大統領に選出されて、果たしてどのようなエネルギー政策を採用するのか、注目してきた。これまでの報道では、はっきりとした骨格を読み取ることができなかった。
今朝Twitterに流れているニュースを見ていたら、「NHKニュース」が「特設 トランプ次期大統領」というページを作っているのを発見した。「米駐日大使に元ロッテ監督バレンタイン氏の起用検討の報道」という「最新ニュース」を初め、「政策」「人事」「ファミリー」という切り口でまとめてくれている。
さっそく「政策」欄を覗くと、トランプ次期大統領が「有権者との契約」として発表したものが掲載されていた。選挙戦の終盤、10月下旬にペンシルベニア州ゲデイスバーグで、2017年1月20日の正式就任後、最初の100日間で実行する計画を「有権者との契約」と称する「公約」として演説したものだ。
「エネルギー政策」を探したら、「アメリカのエネルギーと基盤整備事業法」という項目があった(ちなみに「基盤」とは「インフラ」のこと)。ここには次のとおり記載されている。
「官民パートナーシップと税の優遇措置を通じた民間投資によって、10年間にわたって1兆ドルの基盤整備への投資を行う。歳入中立。」
えっ! これだけ? これがエネルギー政策!?
他にはないのか?
全文を読み返してみたら、「アメリカの労働者を守るための7つの行動」という項目の中に、次の3点が記載されていた。
5.50兆ドルを超す雇用を生み出すシェールガス、石油、天然ガス、精炭など、アメリカのエネルギー資源の生産に対する規制を撤廃する。
6.カナダから南部テキサス州に原油を運ぶキーストーンパイプラインなど、オバマ大統領とクリントン前国務長官によって中断されていたエネルギーインフラ計画を再開する。
7.国連の気候変動対策への巨額の資金拠出を取りやめ、その資金をアメリカ国内の水道や環境インフラ整備の改善に使う。
さらに「中間層への減税と税制簡素化法」という項目の中で「エネルギー規制の撤廃」も謳われているが、これで全てだ。
あれれ。
これらは「雇用政策」や「経済成長政策」というもので、とても「エネルギー政策」とはいえないのではないだろうか?
一方「規制緩和」の中には、オバマ大統領が提案している「米国クリーン発電計画」撤廃も入るので、「パリ協定」への反対を含め「反環境政策」は明確だ。
だが選挙戦の最中に口にしていた「エネルギー自立(Energy Independence)」や、「イラクの石油を取り上げるぞ」とか「サウジの原油輸入を中止する」などはどうするんだろうか。
弊ブログではこれまで、『「よもや、まさか」のトランプさんは「やっぱり」だった』(2016年4月4日)、『トランプ「大統領」のエネルギー政策』(11月10日)、『トランプ「大統領」のエネルギー政策(2)』などと紹介してきたが、トランプさんには整合性のとれた「エネルギー政策」は「やっぱり」ないんじゃないかな。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2016年12月10日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。
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