仕事がうまくいかない時は「因数分解」する

内藤 忍

仕事がすべて思う通りにいっている人などほとんどいません。ソフトバンクの孫氏や、ファーストリテイリングの柳井さんのような有名な経営者でも、うまくいかないでイライラしたり、焦ったりすることがきっとあるはずです。

自分たちの努力ではなく、市場環境によって会社の業績が左右されることもありますが、うまくいかないなと思った時は、環境のせいにするのではなく、今やっていることが環境にフィットしているのかを考えるべきです。マーケットが悪いと嘆いているだけでは、問題は解決しないからです。

現状を振り返る時に有効なのが、「因数分解」してみることです。自分たちがやっている仕事を細かなタスクに分けてみて、どこに問題があるのかを分析していくことです。

例えば、商品の販売が思ったように伸びず、売上が低迷しているとしたら、商品の販売のプロセスを考えてみます。

売上 = 仕入れ力 × 顧客説明能力 × 顧客マーケティング力

と因数分解して、さらにそれぞれを細かく要因に分けていくのです。商品を仕入れて、お客さまに説明し、納得して購入してもらう。この場合、仕入れ、説明、顧客の3つがバランスしていないと成果は出ません。

仕入れた商品に魅力がない、あるいは仕入れる数を確保できないなら、仕入れの問題です。
お客様の数が少ない、あるいは商品に興味を持つお客様が少ないなら、顧客へのマーケティングの問題です。
そして、商品もお客様も充分揃っているのに、売上が伸びないなら、説明の方法に問題があるということが見えてきます。

3つの要素のうち、どれか1つが弱いと感じたら、経営資源がその分野で手薄になっていることを示しています。仕入れが弱いなら、能力の高い人を仕入れ部門にシフトさせる。説明が弱いなら、説明できるスタッフを増強する。顧客の数が少ないなら広告宣伝費用をかける。そんな対策を具体的に立てて実行すれば良いのです。

現実は、それほど単純化できるものではないという反論があるかもしれませんが、経営能力とは、複雑な現実をどこまでシンプルに捉えることができるかのセンスではないかと思っています。普通の人にはどこから手を付けて良いかわからないようなことも、経営能力のある人には、問題がどこにありどう解決すべきかのツボが見えてしまうのです。

問題というのは、顕在化する前に手を打てば、大きな労力を使うことなく対処することができます。会社経営は健康管理と同じで、病気になったら早期発見早期治療が大切です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。