豊洲問題を混乱させる「役所のトリック」

2017年01月24日 11:27

豊洲より築地のほうが汚いことはこどもでもわかるので、科学的には移転中止は誤りだ。法的には宇佐美さんも指摘するように、「豊洲市場の安全は既に証明。移転になんの問題もない」。森山高至のようなデマゴーグは別として、反対派も法的根拠がないことを認めた上で、石原知事時代の「議会答弁」まで退却している。

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これはよくある錯覚で、議会答弁なんて法的根拠にはならない。石原知事が「地下水を飲料水並みにきれいにする」という「合意形成」をしたとすれば、土壌汚染対策法に違反する「過剰対策」であり、都民が損害賠償を請求できる。これが「口約束」でないことは、なんらその適法性を示すものではない。

これは「原発再稼動に地元との合意が必要だ」という約束と同じだ。現在の原発を止めているのは、田中私案と呼ばれるたった3ページのメモである。これは「口約束」ではないが、日付も公印もない私的なメモで法的拘束力はない。ところが電力会社はこれを「役所の命令」と受け取り、全国の原発が止まっている。

こういう誤解の原因は、法律と私的な合意事項を同列にみることにある。法治国家で強制力をもつのは、国会で承認された法律だけである(都の場合は条例も含む)。政令も省令も行政指導も、役所の「お願い」にすぎない。議会答弁は単なる役所の解釈であり、合意事項は非公式の約束だから、一方が破棄したら消滅する。昨年11月7日に移転するという合意を小池知事が破棄したのは、その一例である。

この法律とそれ以外の「役所の掟」の違いは、つくる役所は強く意識しており、法律の条文には具体的な数字を書かないで「政令で定める」などと書き、彼らが自由に書ける政省令を実質的な法律に昇格させる。ところが民間人はそれを知らないので、法令と一体でとらえ、役所の決めたことはすべて法的根拠があると思ってしまう。

これが役所のトリックだ。政省令は役所の私的な「解釈」であり、それが民間と違う場合には行政訴訟で争える。最終的に解釈を決めるのは、裁判所であって役所ではない。これが「法の支配」である。反対派は、行政訴訟を起こしたければ起こせばいい。根拠法が何もない石原知事との「合意」なんて、裁判所で一蹴されるだろう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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