なぜ米国の中東難民受け入れ拒否は“凄まじい身勝手”なのか --- 山田 高明

2017年02月01日 06:00

山田0130

トランプ大統領が難民受け入れを一定期間、全面凍結する大統領令に署名したことが波紋を広げている。しかも、米国にとって有害となりうる国の国民に対しては、ビザ発給を90日間停止するという。その入国禁止措置の対象となるのはシリア、イエメン、スーダン、ソマリア、イラク、イラン、リビアの7カ国だ。トランプ氏は「イスラム過激派のテロリストを米国に入国させない」と決意を述べている。

これに対して、米国内外から非難が沸き起こっている。ハフィントンポストはトップページで「恥ずかしい」という言葉を掲げ、全米各地で広がる抗議デモを取り上げている。

(当該記事「トランプ大統領の難民入国禁止令、全米で抗議デモ広がる 「恥ずかしい」と叫ぶ人々」執筆者: Eline Gordts,他3名)

記事は、アメリカ民主党の上院議員や、デモ参加者などの市民の声を紹介し、入国禁止令によって被害を受ける人々に対して連帯の意を示している。

なぜアメリカが中東の難民を受け入れなければならないか

せっかくだが、この記事を書いたアメリカ人記者たちと、反対に立ち上がったアメリカ人たちの主張を聞く限り、ポイントがズレていると言わざるをえない。

なぜなら、これはあなた方が「善意」から難民を「助ける」という筋の問題ではないからだ。これらの国々からの難民を受け入れ、住まいを提供するのはアメリカの責任であり、義務なのだ。なぜなら中東の内戦を使嗾し、大量の難民を発生させた張本人がアメリカだからである。アメリカ人と米メディアは、まずその自覚から始めてもらいたい。

今回の入国禁止措置の対象国リストを見て、私が真っ先に思い出したのは、ウェスリー・クラーク元米将軍が2007年に行った証言である。彼はNATOの欧州最高連合司令官を務め、オバマと並んで民主党の大統領候補に立候補したほどの要人だ。彼は証言の中で「9.11」直後、中東の7カ国を打倒する計画があった事実を暴露した。その計画書には、今後5年間のうちに軍事力で倒す国として、イラク、スーダン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランの名が記されていた。

おかしな話である。「9.11」直後の時点で明らかになっていたのは、どうやら犯人はアフガンのタリバン政権に匿われているテログループらしい、ということだけ。すると、イラク以下の打倒リストは、いったい誰がどんな理由やプロセスで作成したものなのか。これについては別途記事にしているので、よろしければ参考にしてほしい。

周知の通り、この軍事力による打倒計画は失敗した。それはアメリカのイラク占領統治を影で徹底的に妨害した国があったからである。かくしてネオコンはいったん後退させられた。代わって、ブッシュ政権は国務省・CIA主導の「次策」に切り替えた。どうやらそれが「アラブの春」と呼ばれる“民主化運動”だったらしいのである。その“春”を迎えたイラン以外の国々は今現在、酷い混乱状態か、内戦にある。

さて、その時の「打倒リスト」と、今回の「入国禁止措置リスト」を比較すると、7カ国中、5カ国が被っている。禁止リストの中のシリアとイエメンは、確かに打倒リストには無かった。しかし、シリアの内戦激化にアメリカの責任がないなどと信じる人はいないだろう。また、イエメンも酷い内戦中だが、同国におけるアルカイダ系組織の成長と内戦激化の責を負うべき外国は第一にサウジであり、第二にやはりアメリカである。

つまり、アメリカは、その「入国禁止措置リスト」の7カ国における難民の発生にことごとく責任があるのだ。だいたい、そうやって中東の内戦を影から扇動している連中と、人道問題だからその地域の難民を受け入れよと主張する団体やメディアのバックにいる連中は、同じ存在ではないのか、という疑いを私は持っている。

アメリカの終わりの始まり

あと、トランプ大統領といえば、メキシコに対しても似た措置を取ろうとしている。メキシコからの不法移民の流入が許せないので国境に「壁」を築く、というのだ。しかも、メキシコからの製品に20%の関税をかけることでその費用を捻出するという。

これはメキシコ人に対する重大な侮辱である。不法移民はもともとアメリカ人のほうなのだ。端的にいうとカリフォルニア州まではメキシコ領土だった。アメリカはそこへ移民を送り込み、最終的に彼らの保護を名目にして対墨戦争を始め、メキシコシティまで攻め込んで、領土割譲条約を強要したのだ。これに対するメキシコ人の怒りは今も大きい(*参考記事)。

私の知る限り誰も言っていないが、これから中国とメキシコは対米で連携して、事実上の同盟関係になって動くのではないだろうか。ちょうど第一次大戦時のドイツ帝国がメキシコとの連携に動いたように。また、アメリカは中国の内乱を扇動するが、中国もまたヒスパニック等を操ってアメリカの内乱を扇動する。現在、在米のヒスパニック系住民は6千万とも言われ、しかも増える一方だ。だから、長期累積戦略からいえば、最終的にメキシコは奪われた領土のかなりを回復する可能性がある(*参考記事)。

また、トランプ大統領はいずれイスラエルに開戦免許を与える。対して、アメリカ内外で一斉にイスラム教徒がジハードに立ち上がるだろう。米国内はテロの地獄へと落ちていく。つまり、今度はアメリカが内戦紛争地域になるわけだ。

今のようなアメリカ合衆国はトランプの代で終わりかもしれない。すべて自業自得だ。

(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「フリー座」

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