今年第1弾の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。FF先物動向ではほとんど利上げが織り込まれず、3月14~15日開催のFOMCでの予想も33%程度。米10~12月期国内総生産(GDP)速報値が予想以下で、2016年通期では3年ぶりの2%割れを示したこともあり、様子見の見方が大勢です。では、当サイト常連のエコノミスト陣はどのような予想を描いているのか、フォローしてみましょう。
▽バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミスト
「今回のFOMC では、据え置きを予想する。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、20日の講演で二大目標の達成が視野に入ったとの見方を示した。失業率をめぐっては『長期的(に適正な)水準に近い』、『労働資源の余剰も通常の長期的水準に接近している』と発言。インフレに対しても『労働市場のたるみは、インフレに下方圧力を加えていない』、『原油価格とドルの動向を踏まえれば、労働市場の支援を受けて物価は向こう数年間に2%に到達する』と楽観的だった。FOMC声明文では、労働市場とインフレ見通しを上方修正するだろう。トランプ政権による財政出動が見込まれるなかで、タカ派寄りの姿勢を示すのではないか。ただ、イエレンFRB議長は低下した均衡実質金利の回復には時間を要するとの考えを寄せていた。Fedはタカ派寄りへ軸足をシフトしつつ、年内の利上げは2回にとどめる見通し。バランスシート縮小が取り沙汰されているが、FOMC参加者はあくまで議論の必要性を唱えているのであって、実施を急いでいるわけではない。」
▽JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミスト
「今回のFOMCでは、利上げの道筋につき新たなメッセージを挟み込む公算は小さい。前回のFOMCから数回の利上げを行うと表明済みで、早急に実施すべき兆候も表れていない。従ってフォワード・ガイダンスの『ゆるやかな利上げ(gradual increases)』とする文言を残しつつ、3月利上げを連想させるような記述とはならないだろう。声明文では米10~12月期GDP速報値が予想以下だったが労働市場は安定的で失業率は低い水準にあり、企業の設備投資も回復したため明るいトーンを示すのではないか。インフレ見通しは『概してほぼ変わらず(little changed on balance)』から、『概して安定的(broadly stable)』に差し替える場合もある。バランスシートの記述は、タカ派が議論を求めたとしても据え置く公算。FOMC指導部は、FF金利の正常化を待ってバランスシート縮小の文言変更に取り掛かるだろう。金融政策をめぐる投票では、反対ゼロとなる見通しだ。」
――経済・金利見通しの公表やイエレンFRB議長の記者会見を予定せず、穏便に済みそうな空気が漂います。米10~12月期GDP速報値の鈍化より、米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の前月比17.5万人増に届かない可能性が浮上していることも注意したい。トランプ氏が軍を除く政府機関の雇用凍結を米大統領令で発令したため、政府機関が予想外の減少となる可能性を残します。むしろFedが声明文で労働市場やインフレの文言を上方修正させればタカ派サイドへアクセルを踏んだと判断され、米株安・米金利上昇・ドル高の展開を促すシナリオも否定できません。ただ対円では、リスク許容度低下により上値が重くなるでしょう。
米12月雇用統計でセクター別の前年比は伸びが鈍化。”最大限の雇用”という目標達成は間近?
FOMC声明文にある「インフレ指標や世界経済と金融動向を注視していく」との文言も、据え置きが有力です。ギリシャは債務期限が迫る7月までに、2015年夏に合意した860億ユーロ相当の第3次金融支援と引き換えに構造改革を断行せねばなりません。ところが労働市場やエネルギー部門の改革、2018年以降の財政目標をめぐる第2次審査で、債権団との交渉は難航中。選挙を控え、蘭・独・仏(さらに選挙が今年に前倒しされそうな伊)が妥協するとは到底考えられません。国際通貨基金(IMF)はギリシャの債務が足元の180%付近から2060年には275%へ膨らむとの試算を弾き出しており、第3次支援プログラム参加には緊縮財財政を求めること必至です。
ギリシャは煮え湯のような条件を呑まざるを得ないものの瀬戸際戦術を繰り出す余地があり、市場のボラティリティを上昇させかねません。2月20日のユーロ圏財務相会合までに合意ができるのか、その前に嵐が襲うのか。1月のVIX指数は冬眠状態で2014年7月以来の低水準をつけましたが、2月は眠りから覚めることでしょう。
(カバー写真:Tim Evanson/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年1月31日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。