森友学園問題で飛び出すブーメランは最後に誰を刺す ?

2017年02月28日 06:00

予算委で弁明に追われた安倍首相(首相官邸サイトより)

当初は、野党が筋の悪いネタを針小棒大に騒ぎ立て、そこに上西小百合氏が乗っかってくるという「から騒ぎ」に思えた森友学園の国有地取得問題だったが、ここに来て空気が一変している。

小林よしのり氏(※訂正:小林よしのり氏のサイト「ゴー宣道場」=筆者・泉美木蘭氏=)が、不可解な「錯誤」登記の話を指摘し、さらに郷原弁護士が、アゴラでも転載したブログで泉氏(※訂正)の指摘した問題を“理論武装”している。さすがは土地取引に強い郷原氏。陸山会事件で小沢一郎氏の事務所ががさ入れされた時点から、特捜部の捜査の無理筋を指摘し、その後の小沢氏の無罪を展望していただけに、否応にも説得力を感じてしまう。

そして、登記を巡る不可解さに加え、2015年9月に近畿財務局が森友学園と交渉したタイミングと前後するように、当時の安倍首相の日程が疑惑の「傍証」として注目度が上がっている。詳しい経緯は、東洋経済オンラインに掲載されている安積明子氏の記事を読んでいただきたいが、当時の公開情報をつなぎあわせると、次のような流れが見えてくる。

(略)…このように森友学園問題に関しては、9月3日に国有地売買を管轄する理財局長が安倍首相と面会し、翌4日午前には近畿財務局が瑞穂の國記念小學院の建設会社と会合を開き、午後には安倍首相が大阪入りするという一連の流れが見てとれる。ちなみに昭恵夫人が名誉校長に就任したのは、その翌日の9月5日のことだ。

さらにこの記事にあるように、この当時の理財局長・迫田英典氏が安倍首相と同郷という点や、森友学園が申請した大型木造建築の補助金利用が「スキーム」ともいうべき絶妙さを見せていることがまた、野党や「アベ政治は許さない」クラスタの期待感を高めている。

蓮舫二重国籍を彷彿?ネットで総理動静のアーカイブ

実は、安倍首相の日程の“疑惑”はネット上でも数日前から取りざたされていた。当時の首相の大阪入りの記事がウェブに残っていたのだ。しかも、よりによって安倍首相に親和的な産経がソースという皮肉。産経の記事はもともと、読売や朝日よりも、アーカイブの記事の量が多いように見受けるが(単に放置しているだけなのか)、それが“裏目”に出た形だ。バリバリの左翼法曹団体として名高い自由法曹団の弁護士が「産経新聞、大スクープですね(棒)」とツイートした内容が2000を超えるリツイートで拡散している。

ネットで不都合な真実が指摘されるあたり、蓮舫氏の二重国籍疑惑の往時を彷彿させるようで、アンチ安倍勢力の人たちは「散々ブーメランとバカにされてきたが、今度こそ安倍総理にブーメランを刺しに行けるかも」と、久々に小躍りしているかのようだ。

現時点では「傍証」に過ぎない

小泉元首相以来の安定感を保ってきたはずの安倍首相だが、寄付金集めに名前を利用されたことといい、それにしても今回は、昭恵夫人も含めて脇の甘さが目立つ。だが、最新のNHKの世論調査で、いまだ6割近い内閣支持率を誇り、自民党と民進党の支持率の差も約6倍に開いている「安倍無双」状態であることに変わりはない。しかも、ここまで指摘されていることは、不可解な取引ではあっても、安倍首相が明確に口利きをしたファクトが本稿執筆時点(2月28日未明)で浮上しているわけではない。

実際、大阪入りについての産経の首相動静を見ると、下記のとおりだ(同空港は伊丹空港)。

【午後】0時13分、同空港発。39分、大阪市中央区の読売テレビ着。1時30分から2時29分、番組収録。3時3分から45分、情報番組に出演。48分、同所発。4時7分、同市北区の海鮮料理店「かき鉄」着。故冬柴鉄三元国土交通相の次男、大さん、秘書官らと食事。5時5分、同所発。34分、伊丹空港着。6時8分、全日空36便で同空港発。57分、羽田空港着。7時18分、同空港発。43分、自民党本部着。44分から8時7分、谷垣禎一同党幹事長。8分、同党本部発。31分、東京・富ケ谷の私邸着。

当時の大阪での日程は当たり前のことだが「分刻み」。森友学園、近畿財務局と接触した様子がうかがえないのが現時点でのオモテのファクトだ。結局、ここまで野党やネットで指摘されているのは、ある種の「傍証」に過ぎず、いまの民進党が「確証」をものにできるのか、大山鳴動して何とやらになりそうな気もして、心もとない。

今後、どのような展開に?ちょっと大胆予測

今後、この問題はどのような展開をするのだろうか。私は専門の政治記者ではないので、精緻な予測をする技量も人脈もないが、これまでの政局の歴史からちょっと大胆に占ってみると、いくつかストーリーが思い浮かぶ。当たる可能性は少ないと思うが、3つだけ述べてみよう。

一つは、共産党が「爆弾」を炸裂させるシナリオだ。昔から調査力に定評はあるが、最近も防衛省の機密文書を入手するなど、工作員をそこかしこに張り巡らせている。財務省内に裏切り者がいるかは考えにくいが、「何をしでかすかわからない」不気味さは、民進党よりも備えている。ただし、もし、そんなことが起きれば、歴史的な事件だ。現実味が薄く思う。

そうなると、追及が中途半端に終わるシナリオが思い浮かぶ。「とかげの尻尾切り」だ。

仮に安倍首相が口利きをしていたとしても、最後まで確証には至らない。しかし傍証に対する野党やマスコミの追及が進み、それなりに誰か生贄を出さねばいけなくなる。すでに上西氏のツイッター等で維新との関係が取りざたされていたり、前述の迫田氏がターゲットにされていたりするようだが、迫田氏のような政治家ではない人物については心配な面もある。刑事事件にまで発展せずとも、責任感の強さの余り、体調を著しく崩したりしないだろうか。

「入院」ならまだいいが、これまでも疑獄事件で急に焦点を当てられた非政治家が自死を選んだりする悲劇はあった。家族や職場は、万が一のことがないように目を光らせておいてほしいものだ。

あるか官邸側の「逆襲」

一方で、「攻撃は最大の防御」という言葉がある。傍証の追及にとどまっているうちは、所詮「情報戦」の範囲内の駆け引きだ。もし野党やマスコミがその踊り場で停滞が続くようだと、逆に官邸側が仕掛ける隙が生まれる。たとえば、昨年末から宙ぶらりんになっている蓮舫氏の二重国籍を巡る問題が再炎上する可能性はどうか。

官邸が法務省などを通じて相当な情報収集をしていることは、昨年からの我々の取材でわかっている。もしもだが、本当は衆院解散の時まで温存するつもりだった「伝家の宝刀」となるファクトがあるとしたら、ここぞとばかりに使うのではないか。その場合、まさに総理に当たるかに見えた大ブーメランが、蓮舫氏に刺さるわけだ。

余談ながら、総理追及劇のマスコミ露出は玉木議員らが中心で、党首の蓮舫氏の影が薄いのは気のせいだろうか。

いずれにせよ、現時点では「情報戦」が先行気味で、肝心のファクトがどうなのか、まだ五里霧中だ。今後の展開を注視していきたい。

(追記AM9:20)急に思い出したが、政界ブーメランのあるあるといえば、この件を追及している側の“身辺”がキレイでない場合、一転してそっちの方が司直のターゲットにされるという展開は十分あり得る。まあ、いろいろ噂は聞いてはおりますが。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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